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天声人語

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2011年6月25日(土)付

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 近代の科学技術にとって1986年は最悪だった。1月にスペースシャトル「チャレンジャー」が打ち上げ後に爆発し、4月にはチェルノブイリ原発事故が起きた。あの当時、シャトルが失敗する確率は10万分の1とされていた▼毎日打ち上げても300年に1度しか起きない、と。しかし「神話」は事故調査で覆る。実際にはロシアンルーレットのようなものだったと、調査の中心になったノーベル賞学者ファインマン博士は評した。不都合な事実に目をつぶった「危険な賭け」という意味だ▼日本の原発は、事故は「50億分の1、隕石(いんせき)に当たるような確率」などと言われた。神話と言うより法螺(ほら)に類しよう。そして事故は起き、収束もままならない中で、海江田経産相は他の原発の運転再開を促す「安全宣言」をした。信じる人はいるだろうか▼経産省は事故の当事者でもある。いわば破産者が借金の保証人を買って出たようなものだ。これまでの安全策が瓦解(がかい)したいま、「安全」の一語は軽々しく使える言葉ではあるまい▼佐賀県では明日、玄海原発の運転再開をめぐり県民向け説明会が開かれる。だが説明を受けるのは国が選んだ代表数人という。お上のやり方がよく分かって勉強になるが、納得からは遠い▼ファインマンさんに戻れば、博士はがんと闘いながら渾身(こんしん)の調査をなし遂げた。「技術が成功するためには体面より現実が優先されなくてはならない。自然はごまかせない」。科学者の良心の遺(のこ)した言葉が胸に浮かぶ。

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