HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 31297 Content-Type: text/html ETag: "bd06b2-5d39-54553800" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sat, 25 Jun 2011 02:21:02 GMT Date: Sat, 25 Jun 2011 02:21:01 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年6月25日(土)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

楽天脱退―財界は「進取の精神」を

楽天が、経団連に退会届を出した。電力事業のあり方などをめぐり、方向性の違いが明らかになったためだという。会長兼社長の三木谷浩史氏は、楽天をネット業界を代表する企業に育て[記事全文]

二重ローン―前例にとらわれるな

大震災からの復興を阻む障害のひとつに二重ローン問題がある。資財を失って借金だけが残ってしまい、再起に必要な資金を借りられなかったり、新旧のローンで二重の負担を強いられたりする問題だ。残った借[記事全文]

楽天脱退―財界は「進取の精神」を

 楽天が、経団連に退会届を出した。電力事業のあり方などをめぐり、方向性の違いが明らかになったためだという。

 会長兼社長の三木谷浩史氏は、楽天をネット業界を代表する企業に育て上げた起業家だ。TBS株の買収などで物議をかもしたりもしたが、破天荒で従来の経営スタイルを壊すイメージが強い旧ライブドア時代の堀江貴文氏らと比べると、財界人の受けもよかった。

 その三木谷氏でも、今の財界は見切りをつけざるをえない対象ということらしい。

 確かに、東日本大震災後の経団連の動きは、ずいぶん鈍い。民主党政権への不満や批判こそ目立つものの、自らの提言や行動に新味はない。とりわけ、原発事故への対応や発電と送電の分離をはじめとする電力改革問題については、米倉弘昌会長による現状追認、電力業界寄りの発言が繰り返されている。

 電力会社は、財力の面でも政治力の面でも、財界の中心的な存在として君臨してきた。

 他の産業にとって、地域独占と安定した料金体系に守られた電力業界は、言い値で素材やサービスを買ってくれる上客でもある。表だって電力業界を批判したり、電力改革を打ち出したりはしにくいとの本音も聞く。

 だが、そうした遠慮が変革への動きを鈍らせているのだとしたら、おかしな話だ。

 震災や原発事故を機に、電力を取り巻く環境は大きく変わった。電力供給不足は経済活動にとって大きな懸念材料だが、一方で、再生可能エネルギーへのシフト、効率的で透明性の高い電力供給の再整備、省エネ化や節電といった需要側の改革などには、新しいビジネスの芽があふれている。

 欧米ではこうした分野で新しい企業が次々に生まれている。国内でも、自治体と組んで自然エネルギーの普及を目指すソフトバンクや、スマートシティーの開発に取り組むパナソニック、太陽光発電所の経営へと乗り出すシャープなど、個別企業の動きはある。

 本来、経済とは変化をチャンスととらえ、自由な発想と技術を生かして機敏に動き、新しい価値を創造することにエネルギーの源泉があるはずだ。それは震災からの復興に、最も必要なパワーの一つでもある。

 英語で企業を示す「エンタープライズ」は「進取の精神」の意味も持つ。その集合体であるはずの財界が本旨を見失って、新陳代謝を阻害しているなら、三木谷氏でなくとも魅力は感じまい。

検索フォーム

二重ローン―前例にとらわれるな

 大震災からの復興を阻む障害のひとつに二重ローン問題がある。資財を失って借金だけが残ってしまい、再起に必要な資金を借りられなかったり、新旧のローンで二重の負担を強いられたりする問題だ。残った借金は1兆円ともいわれる。

 政府がようやく対策をまとめ、民主、自民、公明3党で拡充策を協議している。

 古い借金の返済期間を延長したり、金利を減免したりする。返済免除を受けても自己破産扱いにせず、新たな借金をしやすくする。金利も低く抑える。損失がかさんだ金融機関には公的資金を入れやすくする――といった項目が並ぶ。いずれも当然のことだろう。

 この問題の難しさは、無借金の人や過去の災害被災者との公平をどう保つかだ。阪神大震災では自治体が古い住宅ローンの利子を補給しただけだった。

 地域が丸ごと壊滅するような被災の実態や過疎地のハンディも考えれば、前例踏襲では済まない。ただ、被害にはばらつきがある。一律救済は避け、きめ細かな対策が求められる。

 企業や自営業者については、古い債務の処理や新規の投融資で障害になる諸手続きを極力取り払う。借り手が倒産扱いされずに債権放棄を受けられるような目配りも大切だ。

 与野党間の協議では、被災企業に対する金融機関の債権を買い取る公的組織をつくるかどうかが焦点になっている。野党は新機構の設立を求めているが、既存の組織や人材を極力生かす方が効果的だろう。企業再生支援機構を使う案や、整理回収機構から人的な応援を受ける案は傾聴に値する。

 そのうえで、借り手と金融機関と政府が負担を分かち合う仕組みが必要だ。3者で責任を分担し、モラル低下を招かない工夫がいる。公的機関が債権を買い取るなら、金融機関も新規融資で借り手の立ち直りにきちんとかかわるようにすべきだ。

 金融は地域経済が回ってこそ成り立つ。復興が進まないと、借り手の再建計画も立てられない。政府は復興の加速が最大の対策と肝に銘じてほしい。

 個人の住宅ローンでは、公営住宅の提供など実物支援で打開できる場合もある。金融以外の解決策も総動員すべきだ。

 政府を挙げて取り組まなければならない問題なのだが、現状は各省庁バラバラで、時間を空費している。財政事情から、政府が負担の分かち合いを避けたいためのサボタージュではないかと疑いたくなるほどだ。速やかな実施を求めたい。

検索フォーム

PR情報