日米両政府は中国の海洋進出などを強くけん制する共同声明を発表した。ただ、米国は中国との対話にも力を入れている。政権の混乱で対中外交が停滞していることが日本の安全を脅かしている。
二十一日、ワシントンで開かれた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、共同声明で中国を名指しして「国際的な行動規範の順守を促す」「軍事近代化と活動の透明性を求める」と要求した。
直接、名指しすることは避けたものの、中国の軍事的活動が目立つ「宇宙、公海、サイバー空間」で脅威が増していると指摘。中国が海洋権益確保の動きを強めていることに対し「航行の自由を保護し安全なシーレーンを確保する」と強調した。
ただ、中国への気遣いもうかがえる。中国が神経をとがらせる台湾問題について声明は「対話を通じた(台湾海峡)両岸問題の平和的解決を促す」と述べている。
これは「中国は一つ」とする北京の主張を事実上、受け入れ「台湾問題」「中台関係」と明記するのを避け中国が使う「両岸問題」という表現を踏襲したものだ。
背景には米国が中国との対話を加速していることがある。五月にワシントンで開かれた米中戦略・経済対話では双方の軍高官も交えた安保協議が初めて開かれた。
地域の安全保障を協議する「アジア太平洋会議」を設置することで合意し、初会合が二十五日にハワイで開かれる。中国の人権や米国の台湾への武器売却をめぐり激しい応酬を交わしながらも、冷戦時代の米国とソ連のような軍事的対決を防ぐ方策を探っている。
昨年一月の米国の台湾への武器売却決定以来、断絶していた米中軍事交流も再開された。来月にバイデン副大統領が訪中し、答礼として次世代の最高指導者、習近平国家副主席が年内に訪米する。
日中関係は先月、温家宝首相が日中韓三カ国首脳会談のため来日したが、福島でトマトをほおばるなど友好のパフォーマンスに終始。海洋権益や尖閣問題など安全保障にかかわるテーマは首脳会談からはずされた。
その後の菅直人首相の去就をめぐる政局の混迷で「一体、だれと話したらいいかわからない」(中国外務省高官)という外交不在が続いている。日米共同声明が中国に対する強い警戒心をあらわにする一方で対話を求める努力を欠いていれば、中国の不信と敵意は米国よりも日本に向かうだろう。
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