東日本大震災で東北地方の在来線は各所で寸断された。鉄道各社は復旧を急いでいるが路線設定や財源など難題に直面している。国の支援とともに自治体の街づくりと一体となって復旧を進めたい。
一カ月半余りで運転を再開した東北新幹線に比べ、在来線は遅れが目立つ。被害は甚大だった。JR東日本によると青森、岩手、宮城、福島四県で現在も七路線約二百七十キロが不通。二十三の駅が流失し橋脚など千七百カ所以上が破壊された。
同社は前三月期決算で約六百億円の特別損失を計上したが、原発事故で未点検の常磐線などを含めると最終被害額は一千億円を上回る見通しだ。また第三セクターの三陸鉄道や仙台空港鉄道なども大きな被害に遭った。
各社とも復旧対策を進めているが課題はルートの設定である。市街地が壊滅した自治体は新たな街づくりに取り組んでいる。
たとえば宮城県東松島市は集落を高台へ移転することを検討している。その場合、仙石線の東名(とうな)−野蒜(のびる)間もルート変更を迫られる見通しだ。
だがルート変更には土地取得から建設費用の確保などさまざまな難問を解決しなければならない。議論は難航・長期化しがちだ。
ここは国の出番である。仙石線では国土交通省や宮城県、地元自治体とJR東日本が参加する「復興調整会議」が発足しこの秋に結論を出す予定という。当然、他の路線でも実施すべきだ。
財源問題が一番重要である。現行制度では災害復旧費用は鉄道事業者が半分、国と自治体が残りを負担する。その際、ルートは原状回復とし鉄道事業者が赤字であるなどの条件が付く。
これでは大規模な災害時には使えない。また経営規模が小さい第三セクターなどは資金調達は難しい。この際、新たな財源スキームを作る必要がある。
経営形態では国や自治体が土地や線路といった資産を所有し、それを民間会社が借り受けて運行する「上下分離方式」や、富山市で運行している道路を走る次世代型路面電車(LRT)の導入なども検討すべきだ。
JR東日本には最大限の復旧努力を望みたい。在来線は仕事も生活も運ぶ。廃線の選択肢はとらない。七年前、岐阜県の高山線は台風で大被害を受けたがJR東海は三年かけて全線を復旧した。規模は小さいが鉄道会社が社会的責任を果たした好事例である。
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