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天声人語

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2011年6月20日(月)付

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 取り込む家から足が遠のくように、震災後、日本を訪れる外国人は半減した。音楽界でも来日の中止や延期が相次ぐ中、きのう2組が公演日程を終えた。喝采は、「約束」を果たしたことへの感謝で増幅された▼米国メトロポリタン・オペラは5年ぶりの来日、総勢380人が14ステージを務めた。「芸術の力を示す歴史的な公演にしてみせる。日本の現状を世界に正しく伝える一助になれば」。ピーター・ゲルブ総裁の意気込み通り、熱い出来ばえだった▼楽団員は事前に専門家の話を聴き、東京の放射線は大丈夫と納得したという。乳飲み子を同伴したソプラノもいた。不安から看板歌手3人が直前に降りたが、代役がまた一流。「メト」の底力である▼シャンソンの大御所、ジュリエット・グレコは7年前、東京の舞台で中越地震を経験している。ざわめく客席を制して歌を切らなかった度胸は、ファンの語りぐさだ。初来日から半世紀となる今回も、84歳は「やれるなら喜んで」と応じた▼母国フランスは原子力大国だ。在日大使館は、革命記念日(7月14日)の祝宴をいつもの大使公邸ではなく、福島県郡山市で開く。被災地からも数百人を招くという。国策ゆえの気配りだろうが、「困難な時期に連帯感を示したい」と神妙だ▼興行主は収支をはじき、大使館は国益を図るのが常ながら、世の中、損得だけでは回らない。慶弔とも遠来の客人が厚遇され、雨天の友の例え通り、逆境での好意は胸に染む。震災が紡ぐ絆もある。

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