東日本大震災の復興財源を捻出するため、民主党の看板政策だった高速道路無料化の社会実験が凍結される。国民に不評だっただけに、白紙撤回してマニフェスト転換第一号にすべきではないか。
高速無料化実験は昨年度、全高速道路の約二割に当たる総延長千六百五十二キロを対象に一千億円を投じて始まった。本年度は二百億円を積み増し、五区間でトラックの夜間無料化などを追加した。
これらを一時凍結するとともに、自公政権が始めた休日千円と本年度からの平日上限二千円も廃止、計三千五百億円を第一次補正の財源に回した。またぞろ、場当たり的な対応だ。
代わって被災者の通行料金を無料にするのは、直接支援だから納得できる。併せて、白河インター以北の東北道や水戸インター以北の常磐道などでトラックとバスを無料化するのは賛成できない。さらに二次、三次補正予算で全車種への拡大を視野に入れているというから、なおさらだ。
物資搬送、ボランティア、観光など一部は被災地への間接支援につながろう。でも震災復興と無関係な車両も対象だから、まさにばらまきだ。各地の無料化実験を東北に集めた印象はぬぐえない。
定着していた休日千円の打ち切りでは、いろいろな影響が予想される。夏の行楽客を当て込んでいた観光地は善後策に迫られるだろうし、単身赴任者は週末の帰省回数を減らさざるを得ないかもしれない。でも復興のためならば、財源がないならば、と受け入れるだろう。
どこかすっきりしないのは、民主党政権がマニフェストに縛られているからだ。なぜ高速無料化は「凍結」で、「撤回」ではないのか。無料化と切り離し、緻密に復興支援を考えるのが筋だ。
昨年の実験区間の交通量は二倍増となったが、各地で渋滞が発生した。観光地などの人出は増えたが、フェリーや高速バスなど他の交通機関の利用が減った。功罪を十分に検証していないことでも疑心暗鬼を募らせる。
いい機会だ。道路建設に費やした三十兆円超の債務をどうするのか、新たな道路建設をどう考えるのか、自公政権が二〇一七年度分までを確保した割引財源の残り二兆円を有効活用できないか−など総合的な議論を始めるときだ。そのためにも、今の無料化政策を撤回しなければならない。迷走を続け、政争の具となり、ころころ変わる“猫の目”政策はもうごめんだ。
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