HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 17 Jun 2011 22:11:03 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:災害医療支援 反省を共有し備えに:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

災害医療支援 反省を共有し備えに

2011年6月17日

 多くの医療チームが東日本の災害支援に駆けつけた。阪神大震災など過去の教訓を生かして。だが、現地での活動には多くの課題も見られた。国など関係機関は反省点の共有を徹底させてほしい。

 震災発生の二日後には仙台市に入り、検視にあたった名古屋市医師会の医師が疑問を投げかける。

 「今は落ち着いてきたが、初めのころは要所要所で医療支援チームを取り仕切る拠点や人が見当たらず、現場の統制が取れないところが多かった。反省点だ」

 政令指定都市の医師会相互支援協定に基づく要請があり、すぐに駆けつけた。体育館に運び込まれた遺体の死因のほとんどは津波による溺死だった。東日本大震災への医療支援は過去の災害時の規模をしのいだ。阪神大震災(一九九五年)を契機に組織された、外科的治療の緊急度を選別して機動的に医療活動をするDMAT(災害医療派遣チーム)も出動した。

 しかし今回は▽津波の死者か▽見た目には負傷した形跡も見られない生存者か−の両極端にはっきり分かれ、むしろ災害発生直後から慢性疾患の内科的処置が求められた。これは二〇〇四年の新潟県中越地震の状況に似ている。

 糖尿病、高血圧、心疾患などの慢性病治療や衛生医療活動は長引く避難生活に対応して今も続く。併せて医師らは学会などの場で支援をめぐる諸課題を出し合い、備えへの対策を探っている。

 その中で挙げられた大きな課題が、先の交通整理役の不足という点だ。各医療チームは頑張り全力を尽くしたのに、空回りした傾向は否めない。岩手県山田町を回った医師は「その土地で生きていく覚悟がある地元の医師を中心に据えるのがいい」と提言する。実際に宮城県石巻市など複数の病院や診療所は拠点の役割を担った。

 厚生労働省は「基本は県や市町村がその立場。ただ被害が大きすぎて初期は調整能力を超えてしまった」と見る。近く災害医療の検証の場を設けるが、平時から教訓の共有や心構えはできていたか。

 今回も課題や発見は多々ある。医療過疎地だからこそ、地域の医療従事者が熱心に薬の情報の大切さを伝えてきた成果か、お薬手帳などを持って逃げた被災者が多かった。大都市部でも見習いたい取り組みだ。避難先での治療が適切になるのだから。

 今なお進行形の東日本大震災。反省や課題は見逃さずに共有し、日ごろの備えに生かしたい。

 

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