全国知事会の第十一代会長に山田啓二京都府知事が就いた。「危機に立ち向かう知事会」と表明したように、当面は東日本大震災の復興が課題だ。原発問題でも国任せにせず、政策提言してほしい。
投票による会長選挙は二〇〇五年、福岡県の麻生渡知事対岩手県の増田寛也知事(いずれも当時)以来、六年ぶり二回目。山田氏二十五票、上田清司埼玉県知事二十二票と、わずか三票差だった。
総務省出身の山田氏は「地方分権の急先鋒(きゅうせんぽう)」としての実績を、元衆院議員の上田氏は「国を動かす突破力」をそれぞれ訴え、争点のある東西対決となった。開かれた手続きで新会長が選ばれたことを評価したい。
知事会は過去、政府のご用聞き機関などと揶揄(やゆ)された。〇三年から会長を務めた梶原拓・岐阜県知事(当時)が「闘う知事会」を掲げた。引き継いだ麻生前会長は三期六年間で政府にもの申す姿を定着させた。昨年末には、総務省OBの指定席だった事務総長に、初めて自治体出身の橋本光男・前埼玉県副知事を起用した。「国と地方は対等」という分権改革にかける本気度がうかがえる。
今回の大震災で知事会の対応は素早かった。発生四分後に連絡本部を立ち上げ、翌日から緊急広域災害対策本部として被災県の要望を全国に照会した。国の要請を待たずに物資を届けた各都道府県の支援は大きな力となった。今も人員派遣の調整役を担っている。
国の遅い震災対応を尻目に、自治体間の支援は機能し、相互の信頼も深まっている。復興支援は長丁場となる。名古屋市が岩手県陸前高田市を長期支援するように、カウンターパートを決める方法など支援の深化が次の課題だ。
知事会が望んでいた「国と地方の協議の場」が法制化された。震災復興にも活用したい。一つは、国と都道府県が折半で住宅再建資金を支給する被災者生活再建支援法の改正だ。地方側の基金不足が懸念され、知事会は国の負担を95%にまで上げるよう求めている。早速、交渉を始めればどうか。
山田会長は、原発の安全やエネルギーの転換を議論する特別委を知事会に設ける意向だ。国策といえど、原発は地方にある。避難を強いられた福島県内の首長や原発を抱える自治体は言いたいことがあるはずだ。原発の是非についても知事や自治体が話し合って提言すればどうか。大いに国と議論し時に主導していく、そんな知事会に期待したい。
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