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定期検査を終えた原子力発電所の再稼働に、立地自治体が同意しない状況が続いている。定期検査は13カ月に1度義務づけられており、このままでは来年春にはすべての原発が止まる。[記事全文]
スポーツ基本法案が今国会で成立しそうだ。半世紀ぶりに、スポーツ政策の骨格が生まれ変わろうとしている。今あるスポーツ振興法が成立したのは、東京五輪を3年後に控えた1961[記事全文]
定期検査を終えた原子力発電所の再稼働に、立地自治体が同意しない状況が続いている。定期検査は13カ月に1度義務づけられており、このままでは来年春にはすべての原発が止まる。
電力の原発依存はできるだけ早く脱却すべきだが、代替電力の準備が整わない状態だと、日々の生活や経済活動に大きな影響が生じると予想される。
政府は、福島第一原発の事故を受けて各電力会社に求めた緊急安全対策への対応が済んでいることを根拠に、運転再開を求める構えだ。
だが、対策といっても電源車の配備など応急措置的な内容が多い。福島の事態を目の当たりにして、住民の安全を優先する知事らが首を縦に振らないのは当然でもある。政府は自治体の声を重く受け止め、震災を踏まえた運転再開基準の見直しに、急いで着手すべきだ。
作業にあたって求められるのは、「最悪の事態」に対する目配りだ。これまでは「事故が起きないこと」を前提にしてきた。福島では津波だけでなく、地震の揺れによる被害も指摘されている。周辺設備も含めた耐震性能は十分か。いざ事故が起きた場合の態勢や情報伝達、住民避難の方法、訓練などにも今回の事故を反映させ、実践的な中身にする必要がある。
先般、国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書は、稼働条件を改める際の、ひとつの目安になる。
報告書に盛り込んだ28項目にわたる教訓を、できるものからどんどん電力会社に実施させていく。事故時に隣接する原子炉が影響を受けないよう操作の独立性を高める手立てなど、一定の時間を要する対策についても期限を設けて実現を急ぐ。
一律の基準を設けるだけでなく、炉の形式や立地場所など原発が置かれている状況の違いにも注意しなければならない。
年数のたった原子炉や、過去に大きな揺れを経験してきた原発など、リスクが大きいものは再稼働を認めないといった仕分けをしていくべきだ。
基準づくりの段階から地元の意見を反映させていく仕組みも考えたい。最後に「ノー」という権限しかなければ、自治体はそれを行使するしかない。意見交換を重ね、ていねいに積み上げることが、結果的には信頼回復への近道となる。
もとより、原発を再稼働するか否かの重要判断を、電力会社と自治体の協議に委ねてしまっていることこそが不自然だ。
国が前面に出て、先送り状態を打開しなければならない。
スポーツ基本法案が今国会で成立しそうだ。半世紀ぶりに、スポーツ政策の骨格が生まれ変わろうとしている。
今あるスポーツ振興法が成立したのは、東京五輪を3年後に控えた1961年だった。国と自治体の役割を定めた条文がおもで、プロスポーツの隆盛など、その後の時代の変化に追いついていない。
こうした実態を踏まえ、超党派の議員連盟が法案をまとめた。障害者スポーツやドーピング防止活動の推進、紛争解決機関への支援などを網羅する。五輪など国際競技大会の招致に向けた国の支援も盛りこんだ。
前文はスポーツが社会に活力をもたらす意義を認め、国家戦略としての推進を掲げている。東日本大震災の被災地では、子どもたちが体を動かすことで笑顔を取りもどした。仙台を本拠にするプロ野球、Jリーグチームの奮闘は、地域の一体感や元気を後押しした。スポーツの持つ力を実感する好例だった。
スポーツ界は法成立を踏み台に予算拡充を期待している。今年度のスポーツ関連予算は約230億円。同じ文部科学省管轄の文化庁の約1千億円より少ない。「付則」で記されたスポーツ庁創設への待望論が大きいのは、文化庁と予算規模で肩を並べたいからだ。
だが、今の時代に新しい省庁を作るのは簡単ではない。それより、財政事情が厳しいなかでも、スポーツに予算を割く価値があると国民の共感を得られる基本計画作りを急ぐべきだ。現行の振興法で求められた計画は、法制定から39年もかかった。理念が中心の基本法のままでは、ものごとは進まない。
優先すべき施策は何か。
日本オリンピック委員会をはじめ、スポーツ団体は国際競技力向上をめざし、トップ選手への強化費増額を期待する。たしかに五輪で日本勢がメダルを量産すれば国は沸く。メダリストにあこがれる子どもたちがスポーツに親しむようになり、底辺の拡大にもつながる。
ただ、スポーツ立国を旗印に勝利至上主義が過熱するのは問題だ。メダルへの重圧が選手からスポーツの本質である楽しさと喜びを奪うならば、本末転倒になる。法案は「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」とうたっている。
五輪の晴れ舞台を踏めるのは国民全体からみれば、ほんの一握りだ。政府は地域でスポーツをしやすくする環境整備を大切にすべきだ。少数精鋭の強化だけでは、裾野は広がらない。