HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 15 Jun 2011 02:11:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:東電賠償案 抜本見直しが不可欠だ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

東電賠償案 抜本見直しが不可欠だ

2011年6月15日

 政府が東京電力・福島第一原発事故の被災者に対する賠償法案を閣議決定した。将来の電気料金値上げを前提にしており、これでは賠償負担が国民に回ってしまう。抜本的に見直すべきだ。

 原発事故は高い放射線が漏れ続けているうえ、汚染水処理にも手間取って依然、収束の見通しが立っていない。賠償額も廃炉を含めた事故処理費用も時間とともに膨れ上がる一方で、総額十兆円前後に上るのは確実とみられている。

 これに対して東電の純資産は直近で約三兆円にすぎず、会社を清算しても、必要な賠償資金を到底、賄いきれない。つまり東電は事実上、経営破綻状態にある。破綻しているからこそ政府に支援を求めたのだ。

 にもかかわらず、今回の賠償案は東電の存続を前提にしている。株式の100%減資も取引金融機関の債権削減もない。経営陣と社員は形ばかりの報酬と賃金のカットをするが、日本航空など過去の例で実施された年金削減もない。

 国は新たに設立する賠償機構に交付国債を発行して、必要に応じて東電を支援するが、最終的に東電が国に資金を返済する。

 では賠償資金の不足分は結局、だれが負担するのか。カネはどこからも降ってこない。いずれ電気料金値上げで国民につけが回るのはあきらかだ。すでに「二〇一二年度から16%程度の値上げ」という試算も出回っている。

 政府は「リストラの徹底で費用を捻出する」というが、これは詭弁(きべん)に近い。なぜなら、リストラで水膨れした事業費用が節約できるなら、その分は本来、料金値下げに回すのが筋であるからだ。

 政府が法案を閣議決定しても、与野党に異論があり国会で成立する見通しは立っていない。政府内には「法案は六月下旬に開かれる東電の株主総会を乗り切るための方便」という指摘さえある。

 金融市場はそんな事情を見透かして東電株は大きく下落し、将来の破綻リスクも織り込み始めている。退陣表明した菅首相の政権がいつまで続くかも分からず、東電処理が中途半端なまま長引けば、もっとも打撃を受けるのは救済されない被災者である。二重の政治災害と言ってもいい。

 政府はこの際、メンツにこだわらず賠償案を見直し、本来の破綻処理ルールに従って東電を法的整理する。その基本線を守ったうえで、被災者救済と最低限の電力供給事業継続について、新法をつくって対応すべきだ。

 

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