HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 11 Jun 2011 21:06:50 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:居眠りトラック 誰が“凶器”を走らせる:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

居眠りトラック 誰が“凶器”を走らせる

2011年6月11日

 愛知県の東名高速で居眠り運転のトラックに追突され母娘ら三人が死亡した事故で、運送会社の営業所長が逮捕された。経営者はもっと労働環境を改善し、運転手の安全意識を高めることが急務だ。

 トラック業界は近年、年間千五百社以上が参入し、三分の二が消えるという。業界団体によると、二〇〇八年度は千八百六十社が参入したが、二千社以上が廃業や倒産に追い込まれた。

 過当競争がダンピングにつながり、低賃金の長時間労働になる。経済的な事情で、無理を承知で過勤を続ける人も多い。事故車の運転手は公判で「金を稼ぎたかった。仕事内容より給料を重視した」と述べている。

 愛知県警は、運転手(自動車運転過失致死傷罪で公判中)を法定の労働時間を超えて働かせたとして、労働基準法違反容疑で運送会社の静岡営業所長を逮捕し、同容疑などで会社も書類送検した。

 県警などによると、運転手の勤務は午後二時に静岡営業所を出発し、荷物の積み降ろしをしながら愛知・小牧の本社や東京・八王子を回り三十六時間後の午前二時に静岡に戻る。この間の休息と仮眠は十時間で、実質二十六時間の勤務。十二時間の帰宅休息をはさみ、この勤務サイクルを三回繰り返すと一日休みで、週七十八時間勤務となる。

 法定労働時間は一般に週四十時間以内である。厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」では、運転手の拘束時間は月二百九十三時間以内とされる。

 だが、実際の労働時間以外の荷待ち時間や休息、仮眠時間を拘束時間として計算しないケースや、超過勤務が恒常化している会社もある。渋滞などで帰社が遅れ、十分な睡眠が取れないまま出勤することも多い。運送会社は運転手が過労運転にならないよう、きちんと拘束時間を計算し、十分休養が取れているかや過積載でないかなど、走行前や点呼の際に確実にチェックしてほしい。

 全国の運輸局は抜き打ち検査など監視を強めているが、〇九年度の東京労働局の調査では、トラック事業者の九割近くに労働基準法違反があったという。経済活動への口出しは少ないに越したことはない。しかし、それが惨事を招くのなら、もっと厳しい施策も対応も必要だ。何よりも、業界と運転手は、巨大な走る凶器を動かしているとの自覚を持ってハンドルを握るべきである。

 

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