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2011年6月11日(土)付

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「辞意」のあと―政治を動かすために

なぜ、こんなに時間がかかったのか。未曽有の危機にあっても与野党が政争にふける政治に、改めてため息が出る。東日本大震災の発生から3カ月。復興の枠組みを定める基本法案が、き[記事全文]

諫早湾干拓―開門に向け政府は動け

九州北部の有明海で農林水産省が進めた諫早湾干拓事業が、新たな転機を迎えた。干拓地の調整池と海をさえぎる堤防の開門をめぐって、佐賀県と長崎県、そして有明海漁業者と干拓地営[記事全文]

「辞意」のあと―政治を動かすために

 なぜ、こんなに時間がかかったのか。未曽有の危機にあっても与野党が政争にふける政治に、改めてため息が出る。

 東日本大震災の発生から3カ月。復興の枠組みを定める基本法案が、きのう衆院をようやく通過した。参院での審議を経て、来週には成立しそうだ。

 復興庁や復興特区の新設など自民、公明両党の主張を、民主党がほぼ丸のみした。

 しかし、やっと結実した与野党の協調も、この法案の先はまったく見通しが立たない。

 自民党は菅直人首相が退陣時期を明確にしないことを理由に、一部を除き、法案の成立には手を貸さない方針だ。

 この対応は許し難い。そもそも、大義のない不信任案を提出したこと自体が無責任極まりなかった。そのうえ、いたずらに政策協議を先送りするような態度は理屈が通らない。

 永田町のコップの中の不信任騒動のあとも、政治は空恐ろしいほどの停滞を続けている。

 止まってしまった政治を、どうやって動かすのか。

 答えを出すのは、まず首相の方だ。野党の強引な国会対応に屈したくない気持ちはわかる。震災復興をはじめ、多くの課題が道半ばであり、いかにも心残りなのも理解できる。

 だが、いったん辞意を示した首相のもとでは、政府内のあらゆる政策調整が滞りつつある現実が見えてきた。ここは首相自身が、いつ身を引くかを明言し、政治全体を動かす捨て石になる覚悟を見せてほしい。

 復興基本法を成立させれば、次は社会保障と税の一体改革案をまとめる番だ。今月末には、復興構想会議の第1次提言も出て、第2次補正予算案に向けた準備が本格化する。

 ここらあたりが、首相も口にした「常識的」な潮時ではないか。財源を賄うための増税をめぐり、難しい調整が予想される2次補正案の編成は、潔く次の首相に委ねればよかろう。

 自民党の谷垣禎一総裁は不信任案提出に先立つ党首討論で、「あなたがやめれば、党派を超えて団結していく道はいくらだってできる」と首相に迫った。

 その言葉を違(たが)えず、被災者支援や復旧・復興に向けた取り組みで「共同責任」を果たさなければいけない。赤字国債発行のための特例公債法案の成立にすぐに協力するのは当然だ。

 首相の「居座り」の懸念がなくなれば、22日に会期末を迎える国会の延長に野党が反対する理由はなくなる。与野党は年末まで会期を延長し、切れ目なく震災対策にあたるべきだ。

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諫早湾干拓―開門に向け政府は動け

 九州北部の有明海で農林水産省が進めた諫早湾干拓事業が、新たな転機を迎えた。

 干拓地の調整池と海をさえぎる堤防の開門をめぐって、佐賀県と長崎県、そして有明海漁業者と干拓地営農者が対立している。まわりの海の不漁と干拓との関係を調べるため、農水省が開門調査をした場合の環境影響評価(アセスメント)の素案を公表した。

 だがこの素案が手詰まりを開く糸口になるか、はなはだ疑問と言わざるを得ない。

 昨年12月、福岡高裁は堤防の排水門を5年間、常時開門する判決を出した。菅直人首相は最高裁に上告しないと決め、政府は判決を受け入れた。

 長崎県は干拓地の農業者を支援する立場から開門に反対してきた。話し合いに応じない長崎県に対し、農水省は今回のアセス素案をもとに説得にかかる構えで時間をとった。

 農水省の姿勢には、開門を待ち望む側も批判的だった。素案の内容が明らかになって、不信はさらに大きくなっている。

 例えば農水省は、全面的な開門の場合の費用として1077億円と示した。そのうち、洪水に備える排水ポンプに合計478億円必要と試算している。ところが、10年前に農水省の第三者委員会が提言した同じ目的の費用は半額以下の約200億円だった。ほかにも割高に見える費用がならぶ。

 東日本大震災の被災地復興に多額の費用が必要になるいま、「こんなに金がかかるなら開門しなくていい」という世論作りではないのか。漁業者はそんな風に憤っている。

 洪水や大潮に備える工事費用がかさむのならば、そういうときは一時的に水門を閉じることを考えればよい。開門を実現するために本当に必要な工事は何か精査しなくてはいけない。

 諫早湾干拓は1986年から始まったが、もとは食糧難の50年代に長崎県が打ち出した計画に端を発する。食糧増産という本来の目的がなくなったにもかかわらず、2533億円の巨費で事業が継続された。将来の農業生産額は事業費の2%にも満たない年間45億円である。

 アセス素案を見て改めて感じるのは、自然に手を加えると、回復するためにいかに高価なツケを払わなくてはならないかということである。

 農水省がいくら開門調査を先送りしても、地域の対立は消えない。高裁判決で開門が確定しているのを忘れてはならない。判決を実行するために努めるのが政府の仕事である。

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