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東日本大震災の被災地の復興に向けて、第2次補正予算の編成が焦点となっている。約4兆円の1次補正では今年度当初予算の見直しなどで財源をひねり出したが、より大規模になる2次補正では国債の追加発行[記事全文]
震災から3カ月。いまも10万人近くが避難を続け、家や田畑の片付けがこれからの人も少なくない。大半の自治体でなお、ボランティアの人手が不足しているという。もっともっと被災[記事全文]
東日本大震災の被災地の復興に向けて、第2次補正予算の編成が焦点となっている。約4兆円の1次補正では今年度当初予算の見直しなどで財源をひねり出したが、より大規模になる2次補正では国債の追加発行が避けられない情勢だ。
国債を発行した後、その返済財源をどう確保するか。政府の復興構想会議は、今月末に発表する第1次提言の骨子案に、増税でまかなうべきだという考えを盛り込んだ。
わが国の財政は、国債発行残高が国内総生産を上回り、国の借金全体では1.8倍に達するなど、極めて厳しい状況にある。海外の格付け会社は日本国債の格下げに動いている。
復興資金まで将来世代につけ回しすることなく、一定期間で返す段取りをつけることが必要だ。民主、自民、公明3党の政策責任者も、4月末の1次補正編成の際、「復興のための国債は、従来の国債と区別して管理し、その消化や償還を担保する」と合意している。復興構想会議の姿勢を支持したい。
「国債を日本銀行に引き受けさせればよい」との主張がくすぶるが、海外を中心とする投資家から「日本の財政のタガが外れた」と受け取られ、国債急落の引き金になりかねない。危険な考えと言わざるをえない。
税収が多い所得税や法人税、消費税などが増税の候補だろう。どう組みあわせるか、いつから何年程度増税するか。景気への配慮に加え、被災地の住民や企業にも負担増を求めるかどうかなど、検討課題は多い。
税の負担を少しでも減らすため、民間の資金が被災地に流れる仕組みを整えることも忘れてはならない。宮城県が漁業への企業の参入を促す特区構想を発表するなど、種はある。
震災復興と並行し、政府は税と社会保障の一体改革論議で、高齢化に伴う社会保障費の増加や財政再建目標を踏まえて、「費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税収を主要な財源として確保する」「2015年度までに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」との案をまとめた。
震災復興の財源は、こうした方針も考慮に入れて、検討することになる。
被災地を支援し、世代間で助け合う。二つの「支え合い」に伴う負担は、決して軽くない。しかし、先送りはもはや許されない。行政のむだをなくす努力、日本経済を活発にして税収自体を増やす努力とともに、逃げずに取り組んでいかねばならない。
震災から3カ月。いまも10万人近くが避難を続け、家や田畑の片付けがこれからの人も少なくない。大半の自治体でなお、ボランティアの人手が不足しているという。
もっともっと被災地に出かけてほしいのは、大学生たちだ。
法政大の永野宏和さんは先月下旬の1週間、宮城県気仙沼市などで、泥出しやがれき撤去に汗まみれになってきた。
ヘドロを詰めた土嚢(どのう)の重いこと。見渡せば、作業が終わっていない家は無数にある。自分たちの力の小ささに、へこみそうにもなった。でも依頼主が大事にしていたカバンを泥の中から見つけ、感謝された時は、じんときたという。
日中、避難所に取り残されているのは主にお年寄りたちだ。上智大の栗原紗希(さき)さんは同県南三陸町の中学校で、初めどう接すれば、何をすればよいかわからず面食らった。すぐに、肩ひじ張らず普通に話し相手になればよいのだと気づく。「孫ちゃん」と呼ばれ、東京に戻った今も連絡が来る。
「Youth(ユース) for(フォー) 3・11」は、被災地に若者を送る仕組みをつくろうと、学生自身が立ち上げた団体だ。首都圏中心に2650人が登録するが、実際に現地入りしたのは約300人。代表の東大大学院生、船登惟希(ふなと・よしあき)さんは「みな関心はあっても、学生なんかに何ができるかと、心のハードルを上げすぎているのでは」と言う。
受け入れが混乱した災害直後に比べ、最近は様々な団体がマッチングを考え、ボランティアバスや寝場所を用意して参加者を募っている。たとえば企業が交通費を援助するといった応援は、できないものか。
大学も、学生の背中をもうひと押ししてほしい。文部科学省は、震災ボランティアで講義を休んだ学生には補講や公欠扱いで配慮してと、大学に呼びかけている。だが、多くは教員任せのようだ。現地で一定時間活動すれば単位にすると決めた大学は、数えるほどだという。
被災地にカリキュラムや模範解答はない。求められることは日々変わり、混乱や矛盾はつきものだ。その中で境遇の異なる他者と交わり、自分の役割を考え、解決法を探し出す。
社会に出る準備期に大震災に遭遇し、不確かな時代を生きてゆく世代だからこそ、心身に刻んでほしい体験だ。
「自分が人にこんなに優しくなれるなんて」と話した女子学生がいた。周りに元気を与えられる、若さという特権。大人にはうらやましくもある。