HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 07 Jun 2011 21:07:59 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:中東情勢 民主化支援の履行急げ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

中東情勢 民主化支援の履行急げ

2011年6月7日

 イエメンのサレハ大統領がサウジアラビアに出国した。亡命の可能性もあるが、権力の空白がさらに国内混乱を深める懸念もある。民主化促進へ、国際社会は中東支援策の履行を急がねばならない。

 今回の出国劇の予兆は、先月オバマ米大統領が行った中東演説の折にもあった。演説は、民主化プロセスに入ったチュニジアやエジプトに対する経済支援を打ち出しつつ、米権益が関与する湾岸諸国の民主化運動弾圧には温和な対応をするジレンマを抱えている。

 イエメンでは、オバマ演説の直前にもサレハ退陣の基本合意が当事者間で固まりながら、いったん取り消されていた。退陣後の訴追免除をめぐり最終的な合意が得られなかったため、とされる。

 出国は、その後激化した反体制部族勢力による武力攻撃で、サレハ氏が負傷したのが原因だ。サウジでの手術は成功したとされ、今後、大統領が帰国するか否かはイエメン民主化の行方に大きく影響しよう。

 欧米にとってイエメン最大の懸念は、活動拠点を持つアルカイダの分派「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の動向だ。サレハ氏は対テロ対策で欧米に協力してきた。

 AQAPは殺害されたビンラディン容疑者の思想を継承するテロ組織だ。昨年、米国へ向かう航空機爆破未遂事件を起こしたほか、一昨年米テキサス州の基地で起きた乱射事件では、被告のアラブ系米軍医がその指導者と接触を持っていたことでも知られる。

 中東民衆革命の大きな特徴は、これまでアルカイダの関与が回避されてきたことだ。テロに訴えずとも、平和的手段で自らの要求を勝ち取れるという民衆の経験は、テロ組織にとって脅威だ。一方で、独裁体制崩壊後の民主化プロセスは脆弱(ぜいじゃく)でテロ組織が乗じる懸念が常にある。

 イエメン情勢はなお流動的だが、透明性を帯びる政治変革で、今後の課題が炙(あぶ)り出されている点は大きな前進だろう。欧米側が、混乱よりも、社会的安定を優先し、独裁体制を支えてきた歴史的負い目もその一つだ。

 先の主要国首脳会議でも合意された米国主導の中東支援策を通し経済支援を履行するのはもとより、長期的なイスラム対話の実績を積み重ねる外交努力を強化せねばならない。対応が遅れれば、難民増加による国民の悲惨の度合いが増すだけだ。

 

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