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〈行き先を知らずして、遠くまで行けるものではない〉。ゲーテの言葉である。目的地が定まらないと足取りが重くなる。そんな意味だろう。逆に、確かな目標があれば急坂や回り道をしのぎ、転んでも起き上がり、大きな事を成せる▼文豪の故国ドイツが、原発を2022年までに全廃すると決めた。主要国初の「脱原発」は、もともと環境志向の強い世論が、福島の事故で雪崩を打った結果という。電力の23%を賄う原子力の穴は、風力や太陽光の活用で埋める算段だ▼すでに割高な電気料金に響きそうだが、産業界も競争力を案じつつ従った。先々、国民にとっての吉凶は予断を許さない。ただ、この踏ん切りとスピード感、合意づくりの知恵や努力は学んでもいい▼敗戦の闇から、技術力と勤勉ではい上がった日独。先方は異国の失敗で国策を転じ、火元の当方は浜岡を止めたにとどまる。隣国の電力を買えるドイツとは事情が違うけれど、日本が「遠くまで行く」には、国民的な熟議と強いリーダーシップが足りない▼脱原発がエネルギー戦略の根幹にかかわる決定なら、将来図を欠いた節電は枝葉の対応だ。それでも、国が抱える宿題を我がものとし、それぞれが「行き先」を決めて頑張るところが日本人らしい▼企業や自治体には「勝手にサマータイム」の試みが広がっている。東京都は25%の節電を目ざして今週から都庁職員の出退勤を早めた。こうした「枝葉」を官民で積み重ねながら、こぞって「根幹」を論じたい。