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古代ギリシャ人は地球が丸いことを知っていたそうだ。エラトステネスという人は地球の大きさを計算した。二つの都市で観測された夏至の太陽の高度の差から、周囲は4万6千キロとはじいたという▼実際は4万キロだからかなり近い。満足な計測器もなかった時代の知恵に驚く。地球の大きさは、むろん当時と変わらない。だが世界の人口は増え続けてきた。先日は国連が、今年10月には70億人に達するという予測を公表した▼2050年までに93億人、2100年までには101億人を超すという。どこか恐ろしくなる数字だ。地球は誰ひとり振り落とさずに回る。自分もその一員ながら、さぞ重かろうと案ぜずにいられない▼1億年を1メートルとして、地球の歴史を46メートルに表したとしよう。原人の登場は最後の2センチにすぎない。そして「ミリ」にも満たない近代以降、私たちは爆発的に繁栄した。この星の恵みを満身に受けながら、わずかな「身ぶるい」で壊れるもろさを、痛感させられたばかりだ▼かつて読み、書きとめた一首がある。〈幾万年地下にありしを汲(く)み上げて消費して来しこの一世紀〉水野昌雄。石油に限らない。長い地球史からみれば、ほぼ瞬時に万物を消尽(しょうじん)して華やぐ時代へのおののきが、背後に透ける▼どの資源も無限ではない。農地は疲弊し、海は枯渇が心配される。「飽(ほう)」を捨て「贅(ぜい)」を削り、貧富と幸不幸を均(なら)した百億共存をつかみとる知恵が、続く時代には欲しい。周囲4万キロの、この限りある球体の上で。