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2011年6月5日(日)付

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公務員労働権―回復には意義がある

給与や勤務時間など、国家公務員の労働条件の決め方を変える法案を、政府が国会に提出した。民間のように労使交渉で決める仕組みに切り替えることが柱だ。意義があると評価する。労[記事全文]

大相撲改革―親方株問題に取り組め

これで一件落着とは、とてもいかない。八百長にまみれた大相撲が、7月の名古屋場所で通常の姿で開かれることになった。八百長防止策を打ち出して無料公開した5月の夏場所が大過な[記事全文]

公務員労働権―回復には意義がある

 給与や勤務時間など、国家公務員の労働条件の決め方を変える法案を、政府が国会に提出した。民間のように労使交渉で決める仕組みに切り替えることが柱だ。意義があると評価する。

 労働組合をつくる。使用者と交渉し労働条件の協約を結ぶ。要求を掲げストライキを行う。憲法は労働者に、これら「労働基本権」を保障している。

 ただ、公務員は職務の公共性を理由に制約を受けている。法案では、スト権は今後の検討に委ねる一方、警察官などを除いて協約を結べるようにする。

 これまでは、公務員が労働条件決定に直接加われない代わりに、第三者機関である人事院が政府に勧告し、それに沿って決めてきた。ところが、10年余りに及ぶ公務員制度改革論議の中で、この決め方は時代にそぐわないと指摘されたのである。

 年功序列の人事や給与を、能力・業績重視に切り替える。天下りの慣行にもメスを入れる。そんな改革にあわせて、政府が自らの人事権を強め、人事院の縛りを緩めようと試みたとき、基本権問題にぶつかった。

 政府の勝手な対応を許せば、公務員が不利益を被りかねない。そこで、連合などは憲法に沿って労組がかかわれるように基本権の回復を求めた。それは避けて通れない流れだった。

 年功序列は改めるべきだし、民間に似た決め方をするなら、民間の労働者と同じような権利を認めて当然だ。みずから働き方を決めれば、当事者意識や責任感も高まる。うまくいけば、「お役所仕事」の風土が変わるかもしれない。

 だが恐らく、相当な試行錯誤が要る。とりわけ給与について合意を得るのは難しいだろう。

 震災復興財源確保のための公務員給与削減の難航ぶりをみればわかる。新制度を先取りして労使が交渉したが、全体の合意がないまま、政府は法案を国会に出した。新制度になっても妥結に至らず、中央労働委員会の裁定に持ち込まれる例が続出する恐れがある。それでは交渉の意義が損なわれる。

 今後の課題は見えている。たとえば、民間賃金にならうのではない場合の「相場観」を、どうつくるのか。労使が合意すれば決められる労働条件と、国会の議決が必要なものをどう切り分けるのか。粘り強く制度を育てるほかあるまい。

 先送りされたスト権も、いずれ回復できるように検討を進めてほしい。電気の供給を止めてはならないと法で定める電気事業のように、規制を設けてストを認める方法もある。

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大相撲改革―親方株問題に取り組め

 これで一件落着とは、とてもいかない。

 八百長にまみれた大相撲が、7月の名古屋場所で通常の姿で開かれることになった。八百長防止策を打ち出して無料公開した5月の夏場所が大過なく終わり、日本相撲協会から報告を受けた文部科学省が3場所ぶりの通常開催を認めた。

 だが、角界に一息ついている時間はない。

 今回の報告で文科省が協会に強く求めたのが、組織改革に取り組む工程表の提出だった。野球賭博、八百長疑惑と度重なった不祥事の根っこに、相撲文化や伝統という言葉の上にあぐらをかいて改革を進めてこなかった協会や、閉鎖的な角界の構造があったためだ。

 なかでも巨額で売買され、いわば個人資産として扱われている年寄名跡(みょうせき)の改革は避けて通れない。親方株とも呼ばれる年寄名跡は、現役引退後に協会に残るために取得を義務づけたものだ。一代年寄を除いて105株と数が限られるうえ、一度手にすれば、引退後の収入や身分を保証してくれるものとして売買の対象となってきた。

 1970年代には1千万円程度だったが、80年代に億単位に跳ね上がり、借金をして買う例もあったという。96年には故二子山親方(元大関貴ノ花)が名跡取得の取引に絡んで国税当局から購入資金の申告漏れを指摘され、約3億円で売買されていたことがわかった。

 指導者としての能力や、協会に貢献できる人材であるかどうかは二の次で、後進を指導する立場がまずはカネ次第というのでは世間から理解されない。まして協会は、新公益法人への移行を掲げている。

 しかし、角界は年寄名跡を聖域のように扱ってきた。

 96年の申告漏れ問題をきっかけに、当時の境川理事長(元横綱佐田の山)は年寄名跡の売買禁止、協会管理を打ち出したが、親方たちの反発にあって頓挫した。今度の工程表にも同様の改革案は盛り込まれたが、本格的な議論をせず、名古屋場所開催を取り付けるために体裁を整えたにすぎない。

 既得権益を守ろうとする親方たちの話し合いでは前に進まない。年寄名跡は、外部有識者による「ガバナンスの整備に関する独立委員会」の答申でも、改革の最重要点にあげられた。外部の人にも、積極的に議論に加わってもらうべきだ。

 問われているのは、大相撲を将来にどう残していくかという話だ。株の問題を土俵に上げ、正面から取り組んでほしい。

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