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天声人語

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2011年5月31日(火)付

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 自ら切り開こうと思えども、どうにもならぬことに翻弄(ほんろう)されるのが人生である。砕かれし夢のかけらを拾い集め、人はまた顔を上げる。今に向き合う5月の言葉から▼布川事件の元被告2人に無罪判決。「だんだん体が軽くなり、無罪になるっていいなと思った」と桜井昌司さん(64)。杉山卓男さん(64)は「海外旅行に行ける。選挙もできる。住所も自由に変えられる。力が抜けちゃったですね」。奪われた44年を胸に納めての微笑(ほほえ)みだった▼ビンラディン殺害の報に、「9・11」で夫を亡くした杉山晴美さん(45)が語る。「テロを武力で解決できるのか疑問に思う。区切りとは思えないし、癒やされるわけでもありません」▼震災との闘いは始まったばかり。妻と母を流された宮城県南三陸町の及川道男さん(62)が言う。「うちだの車だのは、また買えばいい。でも家族は売ってねえからね。なめくじの歩みで頑張っていきたい」▼「家族の絆ってか、大切さが分かったな。いつもいる人が隣にいるってだけで気持ちが穏やかになる」。岩手県大船渡市の新沼晃さん(63)は、以来、頭ごなしに怒ることもなくなり、言葉が優しくなった▼学生ボランティア130人を迎えた南三陸の公民館長、阿部忠義さん(52)は、まずは現場を見てと訴えた。「ここの人がこれからどんな思いで生きていくのか考えてくれたら十分です。それで将来、町のためとはいわない、日本のために行動する若者が出たら嬉(うれ)しい」。人を助けて変わる人生もある。

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