主要国(G8)首脳会議に出席した菅直人首相。東日本大震災からの復興に全力を挙げると表明したが、日米首脳会談では首相訪米が九月に延期された。政権は崖っぷちに立たされていると心得よ。
仏北西部ドービルで開かれたG8サミット。菅首相は昨年に続く二度目の出席で、二年連続の出席は小泉純一郎元首相以来だ。
ここ数年、一年おきに首相が交代していた日本政治の不安定な状況からすれば、歓迎すべきなのだろうが、首相自身が世界に明確なメッセージを発信するには至らなかったのは残念でならない。
首相はサミット冒頭、原子力発電の安全性を議論する国際会議を来年後半、日本で開催したい意向や、自然エネルギーの割合を20%にする目標年次を二〇二〇年代の早い時期への前倒しを表明した。
日本の首相が冒頭で発言するのは異例だ。大震災、福島第一原発事故をめぐる日本政府の対応や今後のエネルギー政策に、全世界が注目していることも確かだ。
しかし、せっかくの機会だった冒頭発言も、サミットでの議論の流れをつくるには至らなかった。
発言内容からは、「自然エネルギーへの転換」を目指す明確な意思が読み取れないからだ。
エネルギー基本計画を見直してこれまでの原子力、化石エネルギーに、自然エネルギーと省エネルギーを加えて四本柱としたが、原子力の割合は明示していない。
サミットは、原発事故を契機に日本の高い技術力を活用した自然エネルギーへの転換をアピールする機会だったが、首相発言後の討議では原発推進発言が相次いだ。
中途半端な姿勢では、国際社会をリードすることも、信頼を得ることも難しい。
首相は討議の合間には、オバマ大統領との首脳会談に臨んだが、目に見える成果はなかった。
そればかりか、当初は今年前半を目指していた訪米も九月前半へと先送りされた。大震災・原発事故対応を優先したことも理由だろうが、米政府は菅内閣の不安定さを見透かしたのだろう。
米軍普天間飛行場の「沖縄県内移設」も困難な状況が続く。首相は就任後の一年間、打開のためにどんな努力をしたというのか。
国内では首相の震災・原発事故対策を批判する自民、公明両党が内閣不信任案を用意して待ち受ける。民主党内にも同調する動きがある。首相はサミット出席の高揚感に浸っている場合ではない。
この記事を印刷する