今春卒業した大学生の就職率は過去最低となった。東日本大震災の影響を含めると実態はもっと悪い。就職難を打開するには政府、企業、学校の就職支援とともに学生が発想を変えることが必要だ。
二〇一〇年度新卒者の就職率は高校生が前年度比1・6ポイント改善して93・2%、大学生は逆に同0・7ポイント悪化して91・1%だった。高校生は学校とハローワークが協力して早めに就職に取り組んだことが奏功した。
だが大学生は景気回復の遅れや企業の採用抑制姿勢から、内定率はずっと低調だった。そこへ大震災が直撃。結局、就職氷河期だった一九九九年度と同じ水準となった。また今回は岩手、宮城、福島の被災三県の統計が取れないための暫定値。最終的な就職率は過去最悪になる可能性が強い。
課題はすでに始まった来年三月卒業予定者の就職対策である。
リクルートによると来春卒業予定で就職希望の大学生・大学院生は約四十五万五千人。これに対する民間企業の求人数は約五十六万人で、求人倍率は一・二三倍と三年連続で低下するという。
別の就職情報会社の調査では大手金融機関の選考は今月から始まったが、自動車業界など全体として採用は遅れ気味。大学生らの内々定率は35%台と調査開始以来最低の水準にとどまっている。
政府の雇用政策の中で新卒者の就職支援は重要な柱の一つだ。すでに全国五十六カ所に「新卒応援ハローワーク」を設置し、学生らの就職相談に応じるジョブサポーターを二千人以上も配置した。
これらは大企業志向が強い学生と、採用を厳選化しつつある企業とのミスマッチを防ぐことが目的だ。引き続き大学や高校などとの情報交換を推進し、学生との個別相談を強化してもらいたい。
ミスマッチを防ぐには企業側の採用方針の明確化も重要だ。企業が求める人物像としてコミュニケーション能力やチャレンジ精神などを掲げているが、抽象的過ぎる。たとえば語学力などは一定以上の水準を明示すべきではないか。
中堅・中小企業はもっと会社の魅力を高めなければならない。第二、第三のソニーやホンダ、パナソニックなどを目指す。将来像を示して若い社員に夢を実現する気概を与えるべきだ。
学生にも注文がある。安定志向は否定しない。高い目標に向かって努力することは大切だ。だが冷静に自己を見詰めてほしい。働く場は必ずどこかにあるはずだ。
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