HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Thu, 26 May 2011 21:08:13 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:二〇〇一年三月、アフガニスタン中部で、名高い「バーミヤンの…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年5月26日

 二〇〇一年三月、アフガニスタン中部で、名高い「バーミヤンの大仏」が破壊された▼世界中で悲鳴が上がったといっても大袈裟(おおげさ)ではない。東西二つの大仏などは仏教美術のルーツのような極めて貴重な文化遺産。無残にも崩れ落ちた大仏のニュース映像は、ご記憶の方も多かろう▼最近、久しぶりにオマル師の名前を聞き、この世紀の愚挙を思い出した。大仏を破壊したイスラム原理主義勢力タリバンの指導者だ。例の「対テロ戦争」で、先に殺害したビンラディン容疑者に次ぐ米国の「標的」とされ、オマル師も殺害か、の情報が一時飛び交った▼大仏の破壊当時、タリバンは、偶像崇拝を禁じるイスラムに反すると主張した。その教義は事実でも、だから破壊するとの態度はイスラム的ではない。今年の中日文化賞授賞式で、受賞者の一人、龍谷大の宮治昭教授(仏教美術史)の話を聞き、あらためてその意を強くした▼宮治さんが初めて調査でバーミヤンを訪ねた一九六九年当時、「現地の人々は親しみを込め、大きな方の大仏を『お父さん』、小さい方を『お母さん』と呼んでいた」という。現地の人々とは無論、イスラム教徒である▼異教の偶像、即(すなわ)ち本来、自分たちとは相容(あいい)れない存在の、何と柔らかな受け入れ方か。もしそれを雅量と呼ぶなら、諍(いさか)う双方の雅量の欠如こそ、「対テロ戦争」の本質かとも思う。

 

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