HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 24 May 2011 23:08:17 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:国鉄の初乗り運賃が二十円。大学出の初任給は二万五千二百円。…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2011年5月25日

 国鉄の初乗り運賃が二十円。大学出の初任給は二万五千二百円。石原裕次郎さんの「夜霧よ今夜もありがとう」がヒットし、グループサウンズブームが起きたのは一九六七(昭和四十二)年だった▼やんちゃ盛りの二十、二十一歳だった桜井昌司さんと杉山卓男さんが、茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件の容疑者として逮捕されたのはこの年だ。無実を訴え続けたものの、捜査段階の「自白」などから無期懲役が確定した▼仮釈放は九六年十一月。出所後の二人を追ったドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」は、電車の切符を一人で買えない杉山さんの姿を映した。二十九年という埋められない空白が見えたような気がした▼布川事件の再審判決で水戸地裁土浦支部はきのう、桜井さんと杉山さんに無罪を言い渡した。四十四年を経て、ようやく二人の冤罪(えんざい)が晴らされた▼桜井さんは、アリバイを聞く裁判官から「こんな大事な日のことを覚えていないのか」と厳しく問いただされたことがある。犯人でなければ、事件当日は記憶に残る「大事な日」にはならない。裁判官がいかに「有罪推定」に毒されていたかを物語る▼判決は誤判の責任には触れず、捜査や裁判の問題点を踏み込んで検証しようという視点は見られなかった。過ちから教訓を得ようとする真摯(しんし)な姿勢がなければ、奪われた歳月は無意味になる。

 

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