HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38231 Content-Type: text/html ETag: "b9d2d-166f-a9eb6780" Expires: Mon, 23 May 2011 21:21:38 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 23 May 2011 21:21:38 GMT Connection: close 放射能汚染 綿密な健康調査で不安を拭え : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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放射能汚染 綿密な健康調査で不安を拭え(5月24日付・読売社説)

 原子力発電所の事故で多くの人が不安に思うのは、放射線被曝(ひばく)による健康への影響だろう。

 東京電力福島第一原発の事故では、チェルノブイリ原発事故の10分の1程度という、大量の放射性物質が原発の周辺などへ漏れ出した。

 周辺住民を対象に、地元の福島県が、健康への影響を長期間にわたり調査するため、委員会を今週設置することを明らかにした。対象は約15万人で、30年以上にわたる長期の調査になりそうだ。

 原発周辺の住民は将来の健康に心配を募らせている。具体化を急いでもらいたい。

 個々の自治体だけでは手に余る大規模な作業だ。政府も、全面的に支援しなければならない。

 被曝したことによる健康への影響は、1、2年では明確には分からない。調査を10年、20年と続けることが基本となる。

 住民一人ひとりについて、どこで、どれだけの放射線を浴びたか詳細な被曝データを、健康状態の推移とともに収集し、蓄積していく息の長い作業だ。

 住民の被曝量を見積もるためには、場所ごとの放射能汚染状況を精緻に把握する必要がある。

 その汚染状況を踏まえ、汚染地域に居た期間、どう行動していたかを住民から聞き取りをして、被曝量を推計する。

 住民の記憶があいまいになると、被曝状況の把握は難しい。調査着手を遅らせてはならない。

 住民の健康相談などにも、きめ細かく応えることが大切だ。調査だけでは、住民の協力は得にくくなるだろう。

 米軍による広島、長崎への原爆投下では、戦後、米国の主導で住民を対象に大規模な調査が実施された。結果は後に公開され、放射線の人体への影響を見積もる際の基礎データとなっている。

 ただ、この時のデータは、爆発による瞬時の大量被爆の影響評価だ。今回は、低レベルの放射線が長期に及ぼす影響を調べる。違いを考慮して慎重に分析したい。

 チェルノブイリ原発事故では、旧ソ連の情報隠蔽や、政府崩壊もあって、事故直後には、まともな調査が実施されなかった。

 その結果、甲状腺がん以外の影響は少ないとする国際機関の評価に対して、市民団体などが犠牲者は10万人以上と主張し、今なお不安と混乱を呼んでいる。

 その(てつ)を踏んではならない。

2011年5月24日01時06分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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