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天声人語

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2011年5月24日(火)付

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 「トップの犯罪」といえば、贈収賄、背任、粉飾決算あたりが思い浮かぶ。それなりの権限なしにはできない悪事である。かたや殺人、傷害、万引きなどに肩書は要らない。地位が伴えば、大ごとになるだけだ▼国際通貨基金(IMF)の専務理事から転落したドミニク・ストロスカーン被告(62)も、立場と容疑の落差が激しい。ホテルの女性客室係に襲いかかったとして、ニューヨークで起訴され、華やかな地位を失った。保釈も監視用の足輪つきというから、これ以上の屈辱はあるまい▼もともとはフランス社会党の経済通で、来春の大統領選では現職サルコジ氏のライバルと目されていた。政治家の浮名に寛容なお国柄とはいえ、密室での性犯罪となれば挽回(ばんかい)はきつい▼彼の持論は「IMFは消防士にして建築士」だった。通貨不安の火消しと信用再建を掲げ、土地勘のあるユーロ危機などで手腕を示した。そんなエリートの仮面の下は、朝日川柳にある通り〈通貨ほどコントロールが利かぬ人〉だったのか▼消防士でも建築士でもなく、弁護士を頼んで法廷で争うらしい。謀略説もあるが、国内の政敵にせよ、通貨不安に乗じる国際投機筋にせよ、そこまでして失脚させたい標的だったとは思えないのだが▼地位にそぐわない所業というのがままある。そもそもの間違いは、行為そのものより、ふさわしからぬ地位に就いたことだろう。伝えられる愚行が事実とすれば、転落の起点は「病」を抱えたまま重職を受けたことである。

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