HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 20 May 2011 22:08:16 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:裁判員制度2年 もっと参加しやすく:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

裁判員制度2年 もっと参加しやすく

2011年5月21日

 市民が裁判官と共に審理する裁判員制度のスタートから二年。「順調な滑り出し」とする評価の一方、厳格すぎる評議の秘密や心理的負担の問題もある。より参加しやすい制度に磨いてゆきたい。

 「検察側証拠に基づいて判断するので、無罪の可能性があることを常に念頭に置いた」。大津地裁で昨年、懲役十七年が言い渡された殺人事件の裁判員裁判。会見で裁判員の一人は、そう語った。

 十一日間という当時全国最長の裁判を通じ、市民が証拠を公平に判断し、無辜(むこ)の人を罰してはならないという思いで審理に参加した責任感が、ひしひしと伝わる。

 裁判員制度は市民感覚を裁判に反映させるため、二〇〇九年五月二十一日に施行。同年八月三日に東京地裁で初の公判があった。衆院選の選挙権を持つ人の中から無作為抽出の方法で選ばれた六人の裁判員が、三人の裁判官と共に証拠調べをし、判決を言い渡す。

 評議の秘密、職務上知り得た秘密、判決の当否に関する意見−が裁判員の守秘義務とされ、違反した場合は最高で懲役六月や罰金五十万円もある。守秘義務は一生続き、その範囲は広すぎる。日弁連裁判員本部長代行の小野正典弁護士は「最も守るべきは、誰が何をしゃべったかだ」と述べ、守秘義務の範囲を限定的に改善することを提言する。

 守秘義務以外の体験を話すことは元裁判員の心理的な負担の軽減につながる。さらに、公判に参加した裁判員と社会全体が経験則や参加意識を共有することが、司法への市民参加という制度目的を達成する大きな力になるだろう。

 最高裁によると、判決の評議で71・4%の裁判員経験者が「十分議論できた」と答えた。だが、裁判員裁判では、争点整理などをする公判前整理手続きがある。この過程で、裁判官が事件について捜査側の見方に基づく予断を持つ可能性は排除できない。裁判員が裁判官の意見に影響されず、自由に判断し、意見を表明できる環境をきちんと整えることも、制度の根幹にかかわる課題だ。

 二年目には八件の無罪判決があった。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則の浸透をうかがわせる。長すぎる審理も一部あった。職業や年齢によっては参加しにくい人もあろう。来年の制度見直しでは、冤罪(えんざい)を生まない審理の充実と期間短縮の両立を図りながら、市民と共にある司法の実現に知恵を絞ってほしい。

 

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