HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 39084 Content-Type: text/html ETag: "ace22-16a4-1c29e0c0" Expires: Wed, 18 May 2011 21:21:40 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 18 May 2011 21:21:40 GMT Connection: close リビア軍事介入 長引く内戦をどう終わらせる : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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リビア軍事介入 長引く内戦をどう終わらせる(5月19日付・読売社説)

 民衆の独裁政権に対するデモが内戦に転じた北アフリカのリビアに、米英仏を中心とする多国籍軍が軍事介入を始めて2か月になる。

 命運が尽きるとみられたカダフィ氏は、政権の座に居座り、反体制派への攻撃をやめる気配はない。北大西洋条約機構(NATO)が指揮する多国籍軍の作戦の有効性が問われている。

 作戦の当初の目的は、政権側の攻撃にさらされる市民を守ることだった。そのために、国連安全保障理事会は、地上軍の投入を除く「あらゆる措置」を認めた。

 政権側の空軍基地や戦車に対する多国籍軍の空爆によって、反体制派の拠点都市ベンガジの陥落や市民の虐殺は回避できた。しかし、その後、政権側と反体制派の攻防は一進一退を続けている。

 NATOに対しては、「兵力も装備も劣る反体制派をてこ入れしているに過ぎない」との批判さえある。このまま内戦が長引けば、死傷者は増え続ける。軍事介入の正当性も揺らぎかねない。

 膠着(こうちゃく)した戦況を打開するため、地上軍を投入しようとするなら、新たな安保理決議が必要だ。だが、カダフィ政権転覆を目的とする本格的な軍事介入を、拒否権を持つ中露両国が認めるはずがない。

 何より、アフガニスタンとイラクへの関与で余力の乏しい米国自身が消極的だ。オバマ米大統領は「カダフィ政権の転覆は目指してはいない」と言い続けてきた。

 仏英両国は、リビアの体制変革に意欲的だが、米国抜きで作戦を遂行する力はない。

 リビア介入に対する欧米諸国の姿勢に大きな温度差がある以上、軍事介入の強化による事態の打開は難しいだろう。

 調停による内戦終結の道も残されてはいる。だが、軍事介入の人道目的の性格が薄れ、内戦の当事者の一方に肩入れする構図が日増しに色濃くなる現状では、その展望はなかなか開けそうにない。

 国際刑事裁判所(ICC)の検察官が、「人道に対する罪」でカダフィ氏の逮捕状を請求したことも、どう影響するか。カダフィ氏が退路を断たれたと考え、一層の徹底抗戦に向かう懸念もある。

 リビア内戦の長期化は、アラブ諸国に広がる民主化要求の動きにも水を差す。シリアのアサド政権は、反政府デモへの徹底的な弾圧を続けている。リビアへの軍事介入で行き詰まる米英仏は、手を出せないと見ているのだろう。

 欧米諸国には、対リビア戦略の練り直しが急務である。

2011年5月19日01時08分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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