福島第一原発1号機の核燃料は、やはり炉心溶融(メルトダウン)していた。大震災から二カ月後の発表で、東京電力の事態把握は甘かった。最悪の場合を想定した対応策も考えねばならない。
「燃料の一部損傷」と、東電はこれまで説明してきた。だが、現実には燃料棒のすべてが溶け、圧力容器の底にたまった状態であることが判明した。しかも、地震による津波到達から、十五時間二十分後に完全にメルトダウンしていたという。
解析に時間が必要としても、どうして大震災から二カ月もかかったのか。発表があまりに遅い。後から後から、より深刻な情報が出てくる。そもそも、地震当日には炉心の水位低下が確認され、翌日には燃料棒が「一時、冷却水から全部露出した」と説明していた。
ならば、メルトダウンの可能性は十分、予測できたはずだ。それを「一部損傷」と、事故の程度を過小評価した姿勢は、猛省に値する。全炉心溶融について、細野豪志首相補佐官は「想定していなかった」「認識が甘かった」などと述べたが、重大事故の場合は、最悪のケースを想定しておくのが通常の対応ではなかろうか。
甘い見通しに基づいて、事故収束の計画を立てれば、当然、狂いも生じてくる。「水棺」がそうだ。原子炉を冷やすために、圧力容器も、それを覆う格納容器も満水にする作業である。手順どおりに進んでいると誰もが思っていたが、事態は全く異なった。
これまで一万トンもの水を注入したのに、高さ約十九メートルの圧力容器の水位は、底から最大で四メートルしかなかった。格納容器にも水は十分にたまっておらず、ほぼ半分の水が“行方不明”という。高濃度の放射性物質で汚染された水は、原子炉建屋の地下に漏れだしている可能性が高い。
「水棺計画」は使えず、新たな対策を練るしかない。悩ましいのは、今後も水の注入を続けねばならないことだ。
その結果、海に汚染水が流出しては、さらに重大な環境問題となる。封じ込めには全力を尽くしてほしい。
2号機や3号機の原子炉の状態はどうなっているのか。再臨界や水蒸気爆発の恐れは本当にないのか。すべての原子炉の現状をもっと正確に公表すべきだ。
原子炉安定化に向けた工程表は見直されるが、またも「想定外」の事態が発生すれば、「工程」など誰も信用しなくなる。
この記事を印刷する