HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 27481 Content-Type: text/html ETag: "7cdf0f-5ccc-806bbcc0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 16 May 2011 01:21:07 GMT Date: Mon, 16 May 2011 01:21:02 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年5月16日(月)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

皇室と震災―「国民と共に」を胸に

天皇、皇后両陛下が震災で大きな被害を受けた東北3県を訪問した。首都圏の避難所にも足を運ぶなどして、失意の人々を慰め、励ましている。ひざをつき被災者の声に耳を傾ける。声を[記事全文]

情報収集衛星―震災で役立っているか

東日本大震災はすでに2カ月を過ぎたのに、被害の全容をつかみ切れたとはいえない。そんな広域に及ぶ災害をすばやくとらえるのに、役立ったはずのものがある。[記事全文]

皇室と震災―「国民と共に」を胸に

 天皇、皇后両陛下が震災で大きな被害を受けた東北3県を訪問した。首都圏の避難所にも足を運ぶなどして、失意の人々を慰め、励ましている。

 ひざをつき被災者の声に耳を傾ける。声をかける。手を添える。その映像に心を動かされた人も多いと思う。

 雲仙、奥尻、阪神、中越と大きな自然災害のあった地には、必ず両陛下の姿があった。保守派の論客が「ひざまずく必要はない」と苦言を寄せたこともあったが、揺らぐことなく、そのスタイルを貫いてきた。

 困っている人と同じ目の高さに自らを置く。それが新しい時代の皇室の生き方であり、主権者である国民の思いにも沿う。お二人のそんな確信を感じる。計画停電のときには、対象外の御所でも自主的に電気のブレーカーを落とした。これも同じ思いに基づく行いだろう。

 「国民と共に」との姿勢を機会あるごとに示す陛下を、「皇室は祈りでありたい」との考えをもつ皇后さまが支える。皇室の将来やその基盤となる国民との関係を見すえながら作り上げてきた“平成流”といえる。

 皇室と今回の震災を考えたとき、印象深いのは地震発生の5日後、原発事故への不安がピークにあったころに放送された陛下のビデオメッセージだ。

 異例の措置に事態の深刻さを感じた人も少なくなかっただろう。逆に「陛下が皇居にいることを確認できてほっとした」「初めて安心した」といった反応も多数聞かれた。政治家の万の発言よりも、5分間余の陛下のスピーチの方が心に染み、説得力をもったということか。

 期せずしてそこには、社会の「いま」が映し出されているように見える。

 迷走と不信を重ね、発する言葉が国民に届かない政治。それを嘆いたり批判したりする一方で、国政に関する権能をもたないと憲法で定められた天皇に、高度な政治性を託し、あるいは見いだそうという動き。主権者であり現人神(あらひとがみ)とされたかつての天皇と現在の象徴天皇との違いを飛び越えて、終戦時の玉音放送と同視するような論評や感想も目についた。

 しかし今回の放送も被災地訪問も、「公的行為」として内閣の補佐と責任において行われることを忘れてはならない。

 未曽有の災害に直面し、皇室に多くの目が集まる。そんな時だからこそ、両陛下の歩みに思いを致しつつ、天皇の地位や活動のありようをめぐって、国民の間で積み重ねられてきた議論を忘れないようにしたい。

検索フォーム

情報収集衛星―震災で役立っているか

 東日本大震災はすでに2カ月を過ぎたのに、被害の全容をつかみ切れたとはいえない。

 そんな広域に及ぶ災害をすばやくとらえるのに、役立ったはずのものがある。

 宇宙から地上の様子をとらえる情報収集衛星である。

 「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集」と、その目的はうたわれている。「国民生活の安定・安全に資する」ともある。

 文字通りの大規模災害だから津波の状況など、まさに宇宙からの情報収集が役立ちそうだ。実際にどう使われたのか。

 運用に当たる内閣衛星情報センターが所属する内閣情報調査室によれば、さまざまな情報を集約して被災状況の推定地図を作り、各省庁や現地の対策本部などに配布したという。

 しかし、「安全保障上の制約から、使われたかどうかも含めて、情報収集衛星の運用実態は一切明らかにできない」と説明している。

 これでは、具体的にどう役立ったか、さっぱりわからない。果たして、納税者の理解を得られるだろうか。

 情報収集衛星は1998年の北朝鮮によるテポドン・ミサイルの発射を機に、導入が決まった。事実上の偵察衛星である。総費用は約7千億円にのぼる。

 画像を撮る光学衛星と、夜でも観測できるレーダー衛星を2機ずつ組みあわせて使う。これまで8機打ち上げられたが、2機は打ち上げに失敗し、レーダー衛星は故障した。現在は3機の光学衛星が使われている。解像度は商業衛星と同じ程度で、最新の1機は地上の60センチを見分けるとされる。

 宇宙からの詳しい画像があれば、何百キロにも及ぶ海岸地帯のどこがどのように被災したか、たちどころにわかる。建物や道路などの現状も見てとれる。

 今後の復旧作業に向けても、画像は有用なはずだ。

 だが、多くの国民が目にしたのは、米国の商業衛星が撮影した、解像度50センチの驚くほど鮮明な画像だ。政府や研究機関ももっぱらこれを購入している。

 画像を公開すると、秘密にすべき衛星の性能や軌道が明らかになるという。しかし、画像処理の工夫次第で、重大な支障は避けられるだろう。

 これほどの災害である。安全保障には配慮しつつ、持てる技術力を総動員する必要がある。日本の宇宙技術を最大限、震災の対策に役立て、打ち上げたときの目的を果たして、国民に示してほしい。

検索フォーム

PR情報