民主党政権の象徴でもあった地域主権改革関連三法がようやく成立した。「地域のことは地域で決める」という脱中央集権の出発点に立った。早速、東日本大震災の復興に生かし実を結んでほしい。
今回成立したのは、国が自治体の仕事を縛る義務付け・枠付けを廃止する▽国と地方の協議の場を設ける▽議員定数の上限撤廃などの地方自治法改正−の三法。昨年三月に提出され、長く継続審議となっていた。
政府・民主党は自民党の主張を受け入れ、法案から「地域主権」の文言を一切削除した。金看板は下ろしても、政権の一丁目一番地に掲げた精神は維持してほしい。
最も注目したいのは、国と地方の協議の場だ。これまでも全国知事会など地方六団体と政府首脳との会合はあったが、主に陳情・要望の機会だった。これが法制化により、協議結果を尊重することも明記された。この意義は大きい。
「子ども手当」のように、自治体が実務を担う政策なのに国だけで決めてきた例は多い。今後は地方の行財政に影響を及ぼす重要事項は、企画・立案段階から協議の対象となる。国と地方の双方が案を出し合い議論してこそ、分権改革が目指す「対等のパートナー」に近づく。
そこで提案したいのは、震災復興プランづくりでの運用だ。岩手、宮城、福島三県でそれぞれ地域事情は異なる。各県が計画案を示し政府案と調整していけば、地域主導の復興が期待できる。専門の分科会を設けるのも手だ。
ほか二法では、義務付け・枠付け廃止の一括法は保育所の設置基準、公営住宅の整備基準など四十四本からなる。ただ国が従うべき基準を一部残しており、完全な移譲を求める地方側との隔たりはある。改正地方自治法では議会改革論議の活発化を期待したい。
今回の三法は地域主権改革の入り口にすぎない。継続審議の間、義務付け廃止など百八十八本を盛り込んだ第二次の一括法案が提出されたが、審議に入っていない。国の出先機関の原則廃止は先送りされ、地方が自由に使える一括交付金は試行段階だ。権限、財源の移譲に対しては、中央府省の抵抗が根強い。三法の成立が壁を突き破る突破口になるべきだ。
地方分権の議論は一九八七(昭和六十二)年に始まった。以来、歩みは極めてのろく、霞が関に幾度も巻き返しの余地を与えてきた。東北復興の課題に直面する今こそ、スピード感が求められる。
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