HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38888 Content-Type: text/html ETag: "129d94-1670-a7f5ab80" Expires: Thu, 12 May 2011 02:22:46 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 12 May 2011 02:22:46 GMT Connection: close イージス艦衝突 無罪は事故の免罪符ではない : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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イージス艦衝突 無罪は事故の免罪符ではない(5月12日付・読売社説)

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突し、清徳丸の父子2人が死亡した事故で、横浜地裁は、あたごの当直責任者2人に無罪を言い渡した。

 2008年2月に起きたこの事故で、2人は業務上過失致死罪などに問われたが、判決は「犯罪の証明がない」と結論付けた。立証を尽くせなかった検察側の大きな失点である。

 検察は、あたご側に衝突回避義務があったことを証明するため、衝突に至るまでの清徳丸の航跡図を証拠提出した。弁護側は、清徳丸が急な右転をしたことが原因と主張し、争った。

 判決は、「航跡の特定方法に見過ごせない問題点がある」「恣意(しい)的に僚船の船長らの供述を用いて図を作成した」と、検察側の航跡図の信用性を否定した。回避義務は清徳丸の方にあった、との判断も示した。

 公判の証人尋問では、僚船の船長が「(検事が)勝手に書いたと思う」と証言していた。

 清徳丸が沈没したため、搭載していた全地球測位システム(GPS)による航跡特定ができなかったという事情があるにせよ、検察の立証は緻密さを欠いていたと言わざるを得ない。

 起訴された2人は衝突の約12分前に当直責任者の任務を交代していた。判決は2人について、「周囲の状況を十分注視していなかった」などと責任者としての行動に問題があったことも指摘した。

 個人の罪は認められなかったが、事故を起こした海自は責任を免れるものではない。

 既にこの事故の海難審判は「衝突の主因はあたご側にあった」との裁決を出している。防衛省も、あたごの安全監視体制に不備があったと報告書で認めている。

 あたごは、事故の約1年前に就航した最新鋭のイージス艦で、最高水準のレーダーを搭載している。装備がどんなに優れていても、安全確保のための基本的任務をおろそかにすれば、事故につながる。それが教訓といえる。

 事故が発生したのは千葉・房総半島沖の船舶過密海域だ。再発防止のため、こうした海域における自衛艦の航行のあり方やルールについて検討する必要もあろう。

 海自では、この事故以外にもイージス艦の情報流出や停泊中の護衛艦火災などの不祥事が相次ぎ、大量の処分者が出た。

 今は失った信頼を回復する途上にある。判決を機に隊員教育などを改めて徹底してもらいたい。

2011年5月12日01時34分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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