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菅直人首相が、エネルギー基本計画を白紙に戻し、原発依存を改める方針を明らかにした。国民に向けた記者会見で方向性を明確にした意味は重い。現行の計画では、54基ある原発を2[記事全文]
第3回米中戦略・経済対話が終わった。中国の人民元と人権問題が争点になると見られたが、いずれも突破口を開くには至らなかった。ただ、初の「戦略安全保障対話」など、米中協調を[記事全文]
菅直人首相が、エネルギー基本計画を白紙に戻し、原発依存を改める方針を明らかにした。国民に向けた記者会見で方向性を明確にした意味は重い。
現行の計画では、54基ある原発を2030年までに14基以上増やすことになっている。総電力に占める原発の割合は50%以上と想定されていた。だが今回の震災で、原発は安全性の面でもコストの面でも、信頼性を根底から失った。
首相は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「基幹エネルギー」に加えることも表明した。これまでより一歩踏み込んだ決意と言えよう。
こうした自然エネルギーについては、「天候に左右され、電力の安定的な供給ができない」との指摘がつきまとっている。
しかし、02年の東京電力によるトラブル隠し、07年の新潟県中越沖地震、そして今回と、この10年間に日本で3度起きた電力供給危機は、いずれも原発が原因で、むしろ安定供給の弱点になってきたことがわかる。原発の集中立地というシナリオは完全に裏目に出た格好だ。
もちろん、すぐに原発を全廃するわけにはいかない。分散立地型の自然エネルギーにも発電能力などに課題がある。
ただ、立命館大学の大島堅一教授によると、70〜07年度に一般会計から出されたエネルギー対策費の97%が原子力関連につぎこまれてきた。こうした予算を新エネルギーへと振り向ければ、技術開発や普及支援、人材の確保などを進めることができるはずだ。
電力会社が送電網を独占していることが、新規参入を難しくし、代替エネルギーの普及を阻害しているとも指摘されている。既存の電力体制を見直し、発電と送電の分離なども真剣に検討するべきだ。
そして、新エネルギーや省エネ型の商品・サービスを提供する新しい産業や事業者の参入を奨励し、必要な規制緩和をはかる。政策が民間の自律的な成長へと連動していけば、成果は上がってくる。
原発推進の根拠でもあった「電力消費の増加」に歯止めをかけることにも気を配りたい。節電は即効性の高い政策でもある。電力消費を10%抑えると、100万キロワットの原発13基分に相当する。
心配なのは首相の求心力だ。見直し議論の場やスケジュールも定かでない。首相の発言である以上、きちんと道筋をつけてもらいたい。普天間問題のように「やっぱりだめだった」は、金輪際ごめんである。
第3回米中戦略・経済対話が終わった。
中国の人民元と人権問題が争点になると見られたが、いずれも突破口を開くには至らなかった。ただ、初の「戦略安全保障対話」など、米中協調を内外に発信する対話の場としての存在感は強まったといえよう。
経済対話の成果としては、持続可能な成長をめざす「包括的な枠組み」が発表され、米中をグローバル経済に重要な影響力を持つ「世界最大の二つの経済体」と位置づけた。
大国の責任を自覚していると中国がみずから認めたものとして、これを受けとめたい。
過小評価との批判が絶えない人民元については、中国は為替レートの弾力性を高めることを約束した。米国からすれば、人民元の着実な切り上げ表明として受け入れられるものだ。
これに対し、米国は為替レートの過度の変動を警戒すると応じた。膨大なドル資産を持つ中国は急激なドル安展開を恐れていた。米中は双方の通貨に言及することで、対立の激化を何とか回避したとはいえる。
しかしながら、米中間のトゲである中国の人権問題で進展がなかったのは、極めて遺憾だ。
中国ではこのところ、著名な芸術家である艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏ら民主・人権活動家が相次いで自由を奪われている。バイデン副大統領やクリントン国務長官ら米側は中国の人権状況に警告や懸念を表明したが、中国側はまともに受けとめなかった。
中国は人権を多岐にわたる米中間の問題の一つに抑えこみたいのだろうが、それでは米国民の信頼と理解は得られまい。
一方で、初めて開いた「戦略安全保障対話」は、誤解に基づく衝突などを防ぐための信頼醸成を目的としていて、国防・外交当局者以外に軍幹部も参加した。クリントン氏は「両国関係を計り知れないほど強化するものだ」と高く評価した。
そのうえで、南シナ海の海洋権益をめぐる対立などを念頭に、アジア太平洋地域の共通の利益と課題についての協議を始めることになった。
米中はこのほかにも、バイデン氏訪中や習近平・国家副主席訪米など外交日程がぎっしりつまっている。
両国関係の盛んな展開を受け、日本はどう動いていくか。月内には日本で日中韓首脳会議がある。フランスではサミットが開かれる。大震災や原発事故への対応に追われる菅直人首相だが、これらを日本復興への決意を示す、外交再起動の契機としてもらいたい。