東日本大震災からきょうで二カ月。避難所暮らしを強いられている被災者は依然多いが、生活再建に向けた政治の動きは鈍い。二〇一一年度第一次補正予算に続き、二次補正の成立も急ぐべきだ。
菅直人首相は記者会見で「復旧から復興への足取りを進めていかねばならない」として、復興に向けた理念や組織を定める復興基本法案と、そのために閣僚を増員する内閣法改正案を週内に提出し、成立を急ぐ考えを明らかにした。
しかし、地震や津波で家や仕事を失ったり、原発事故で避難を余儀なくされている被災者らは、復旧・復興に向けた政府や国会の遅々とした動きを苦々しく見ているに違いない。
二日に成立した四兆円超の一次補正は、がれき処理や仮設住宅、道路・港湾の修復などが中心だ。
新しい街づくり、農漁業の立て直し、雇用対策を含む産業振興には二次補正を急がねばならない。最大三百万円の住宅再建支援金の上積みや、損壊住宅のローン問題への対処も必要になろう。
復興を軌道に乗せるには、今の国会を延長してでも二次補正を早期に成立させるのは当然だ。
ただ、首相にその気はなく、国会を六月二十二日の会期末でいったん閉じて、その後、二次補正編成に取り掛かるつもりのようだ。
六月に予定される政府の復興構想会議による第一次提言を踏まえるためだという。次の国会召集が八月下旬以降だとすれば、本格的な復興に取り掛かるのはどんなに早くても九月以降にずれ込む。
そんな悠長なことでは被災者や自治体の理解は得られまい。
国会が閉じられれば、野党に国会の場で追及されることはなくなる。首相の進退に直結する内閣不信任決議案を提出する機会を封じることもできる。野党側が二次補正先送りを「政権延命が狙い」と批判するのもうなずける。
二十兆円に迫る二次補正の財源を「社会保障と税の一体改革」に連動させる思惑もあるのだろうが、復興を盾にした消費税増税など許されない。不要不急の予算や行政の無駄を徹底的に洗い出して財源を捻出することが先決だ。
そもそもこの政権は被災者のことをどこまで真剣に考えているのか。民主党の地震対策副本部長だった石井一副代表らは外遊先のフィリピンでゴルフに興じていた。
憲法は国会を唯一の立法機関と定める。ゴルフの時間があるのなら、暮らしを立て直す法律を一つでも多く成立させたらどうか。
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