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ようやく地域主権改革の関連3法が成立し、公布された。もはや民主党が改革を「政権の1丁目1番地」と唱えていたことすら忘れられているのではないか。それほどこの1年間、地域主[記事全文]
民衆のデモによって30年続いた強権体制を倒して3カ月。エジプトは秋に予定される初めての民主的総選挙に向けて熱い政治の季節を迎えている。中東情勢では、政府による弾圧が続く[記事全文]
ようやく地域主権改革の関連3法が成立し、公布された。
もはや民主党が改革を「政権の1丁目1番地」と唱えていたことすら忘れられているのではないか。それほどこの1年間、地域主権改革の影は薄かった。
政府の出先機関の原則廃止は先送りされ、自治体が自由に使える一括交付金も、まだごく一部での運用が始まっただけだ。
法案審議でも自民党が「地域主権と国民主権や国家主権との関係があいまいだ」と主張し、条文から地域主権改革という言葉が削除されてしまった。
それでも、3法の成立には意義がある。改革の原動力になり得るものとして評価する。
具体的には、これで、法律で自治体の仕事のやり方を縛る「義務づけ」の廃止への道が開かれた。地方議会の議員定数の上限をなくすので、議会のあり方や定数論議が活発化する、といった進展も見込める。
そして最大の目玉は「国と地方の協議の場」だ。官房長官ら主要閣僚と、全国知事会など地方6団体の代表が、自治にかかわる政策を幅広く企画段階から話し合う。政府と自治体が法案づくりの共同作業をする場という位置づけといえる。
これまでは「子ども手当」のように、自治体が窓口を担う政策であっても国が決めてきた。分権改革が地域主権改革と呼び名を変えても、各省に骨抜きにされたように、国と地方の上下関係は揺るがなかった。
これに反発した知事会などが、5年前から「協議の場」の法制化を各党に求めてきた。
それだけに自治体側には「国と地方の対等な関係への一歩だ」との期待感が広がる。
速やかに、東日本大震災の復興策や、社会保障と税制の一体改革などを議論してほしい。
ただ、成果を上げるには、二つの難題を越えなければならない。ひとつは各省の姿勢だ。企画段階であることを理由に情報を出し渋るようでは、議論が空回りしてしまう。国民にわかるように説明責任を果たすのかどうか、各省が問われる。
二つめは自治体側の覚悟だ。税財源問題では、豊かな地域と貧しい地域が対立する。国の出先機関の廃止では、知事会の中でさえ見解が分かれる。ましてや首長と議会の溝は深い。6団体はそれぞれの中をまとめられるのか。さらに他の団体と一致できるのか。
できなければ、「協議の場」は「壮大な陳情合戦の場」になるだけだろう。せっかくの法律を生かすか否かは、当事者たちの力量にかかっている。
民衆のデモによって30年続いた強権体制を倒して3カ月。エジプトは秋に予定される初めての民主的総選挙に向けて熱い政治の季節を迎えている。
中東情勢では、政府による弾圧が続くリビアやシリアに目を奪われがちだが、中東の将来に大きな影響を与えるエジプトの民主化の行方にも注目したい。
エジプトでは議会選出まで、軍が全権を掌握している。革命で警察がデモ隊に銃撃し、800人以上の死者を出したために、中立を守った軍が秩序維持を担うことになった。
革命後の混乱は、カイロでイスラム教徒とキリスト教徒の衝突で死傷者が出るなど続いている。しかし、民主化の実現が軍頼みであることは、異常な事態なのだと、忘れてはならない。
これまで、市民の政治組織の連合体が要求してきた旧体制の清算や民主化について、軍はおおむね受け入れてきた。
大統領の任期を2期8年までに制限する憲法改正案が国民投票で承認され、秘密警察は解体された。前体制で任命された軍出身の首相は解任され、文民のシャラフ現首相が任命された。
ムバラク前大統領に対するデモ隊への武力行使や不正蓄財の疑いでの取り調べも始まった。
軍が国民の意思を尊重するのは、国民と国際社会の圧力があるためだ。今後も軍の動きに目を光らせる必要がある。
民主化実現には一日も早い総選挙の実施が必要だが、新しい政党の創設や民主化の啓発には十分な準備期間も必要だ。
旧政権下で最大野党でありながら、非合法だったイスラム組織のムスリム同胞団が4月末にやっと政党を発足させた。
民主化デモで中心となった既存の政治勢力に入っていない若者たちが政党をつくる動きもある。若者たちの間では民主化の準備のために、できるだけ時間が欲しいという声がある。
政治プロセスを急ぐばかりでは、旧政権関係者や軍の人脈、旧野党など既存勢力が政治を独占することになりかねない。
国際社会はエジプトの政治や社会の状況に応じて、国民が望む形での民主化が実現するよう支援することが求められる。
エジプトは、アラブ世界で政治、教育・文化、宗教の中心であり、中東和平でも重要な調停役を演じる。この国で民主主義が実現すれば、強権支配や暴力やテロがはびこる中東の民主化モデルとなるはずだ。
旧政権時代に経済や社会開発を援助した日本は、民主化を助け、新たな政治の担い手と信頼関係を結ぶことが必要だ。