HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38997 Content-Type: text/html ETag: "198ead-1649-100cdf00" Expires: Sat, 07 May 2011 23:21:38 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 07 May 2011 23:21:38 GMT Connection: close 英国民投票 出直しを求められた選挙改革 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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英国民投票 出直しを求められた選挙改革(5月8日付・読売社説)

 英国の2大政党制を支えてきた下院の単純小選挙区制度の改正案が、5日行われた国民投票で否決された。

 賛成32%に対し、反対は68%に達した。

 改正を推進した連立第2党の自由民主党に対する国民の失望が、改正案を葬り去ることになった。現行制度の単純明快さに比べ、提案された投開票方法が複雑だったことも影響したのだろう。

 国民投票をめぐっては、連立第1党の保守党が改正に強く反対しただけに、今後の政権運営が困難になるとの見方も出ている。

 改正案は「優先順位付き連記投票制」と呼ばれるものだ。オーストラリアなどで採用されている。現行と同じ小選挙区制ながら、投開票の仕組みが異なり、「死票」を減らす工夫がしてある。

 得票数が比較的忠実に議席数に反映する比例代表制には及ばないが、実現すれば、第3党の自民党に有利に働くとみられていた。

 こうした国民投票が行われた背景にあるのが、伝統的な2大政党制の揺らぎである。

 保守党と労働党の合計得票率は戦後は9割を超えていたが、昨年5月の総選挙では65%にまで落ち込んだ。その結果、2大政党はいずれも過半数を占められず、36年ぶりのハングパーラメント(中ぶらりん議会)となった。

 両党は自民党との連立協議を進め、自民党は保守党を選んだ。選挙制度改正の是非を問う国民投票の実施については、保守党が受け入れたからだ。

 しかし、保守党は自らに有利な単純小選挙区制を変える意思はなく、選挙制度改革では、初めから自民党とは同床異夢だった。

 一方、政権与党となった自民党は連立維持のため、国民に痛みを強いる歳出削減や移民受け入れ制限などで、保守党に協力せざるを得なくなった。

 その結果、党の独自色が失われ、国民投票と同時に行われた地方議会選で大敗した。新たな投票方法が拒否されたのも、“変節した自民党”への有権者のしっぺ返しだったと言えよう。

 それでも、大政党に有利な単純小選挙区制が、変化する民意をくみ上げる装置として、有効性を失いつつある現実は変わらない。

 最近、自民党が総選挙の得票率で2大政党に迫っているのは、既存の政治に飽き足らない有権者が増えていることを示している。

 日本の手本となっていた英国の選挙制度が、変革を迫られていることだけは確かである。

2011年5月8日01時25分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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