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東北地方では例年、ゴールデンウイークが田植えの季節だ。ところが、東日本大震災に直撃された岩手、宮城、福島各県では様子が一変してしまった。津波をかぶった田は、農林水産省の[記事全文]
老朽化が進む航空自衛隊のF4戦闘機の後継選びが、本格的に動き出した。日本が保有する3機種、約260機の戦闘機のうち、最も古いタイプに代えて約40機が更新される。総計1兆[記事全文]
東北地方では例年、ゴールデンウイークが田植えの季節だ。ところが、東日本大震災に直撃された岩手、宮城、福島各県では様子が一変してしまった。
津波をかぶった田は、農林水産省の推計では3県だけで2万ヘクタール近くに及ぶ。がれきを除いた後、真水を入れて排水を繰り返す「塩抜き」が必要だ。被災した水田すべてを元の状態に戻すまでに、3年程度かかりそうだという。
除塩事業については、国の補助率を9割まで高めることが決まり、今年度の第1次補正予算に対策費が盛り込まれた。条件が整った所から作業を始め、再生へ一歩を踏み出したい。
その際に大切にしたいのは、新しい農業像を見すえた取り組みである。
今回の津波では、田畑だけでなく機械や倉庫も流された農家が少なくない。新たに借金して投資をすることが難しいケースも出てくるだろう。
東北地方はもともと、集落ごとに農作業の一部を共同で行う集落営農が普及している。共同体としての基盤を生かし、自力で農業を続けることが難しい農家は余力がある農家に作業を委託したり、農地を譲り渡したりしやすくするよう、環境を整えたい。経営規模の拡大は、日本のコメの国際競争力を高めることにもつながる。
民間の資金や発想も積極的に活用しよう。このところ食品関連業や建設業などから農業に参入する例が急増し、農業分野に投資する民間ファンドも登場している。地元農家とともに長期的な視点から農業に挑戦しようとする企業の動きを、規制緩和を進めて後押ししてほしい。
そして、若者をどう呼び込むかだ。農業は全国的に高齢化と後継者不足が著しいが、東北地方も例外ではない。
東日本大震災の後、東北の復興に加わりたいという若者の声を聞く。その意欲を農業にも取り込めないか。魅力的な将来ビジョンで若者を引きつけ、創意工夫を生かしていく。そんな循環を作りたい。
福島第一原発の事故による農業被害には別の視点が必要だ。放射能汚染のため、福島県内では約1万ヘクタールでイネの作付けが禁止された。愛着ある住まいと田畑を離れ、避難している農家も多い。
原発事故の収束が最優先であることは言うまでもない。土壌の汚染除去の方法では、ナタネが放射性物質を吸着しやすいという研究もある。その検証を含め、政府は世界中から知見を集めて対策を急いでほしい。
老朽化が進む航空自衛隊のF4戦闘機の後継選びが、本格的に動き出した。日本が保有する3機種、約260機の戦闘機のうち、最も古いタイプに代えて約40機が更新される。
総計1兆円近い大型調達となる。財政難を踏まえ、多角的な視点からバランスよく熟慮し、国民にわかりやすく説明する。そうした姿勢で、政府は最善の選択に努めなければならない。
防衛省は先月、関係国の政府や企業向けに機種選定の説明会を開いた。9月末までに性能や価格などを提示してもらい、比較検討して年内に決定する。
日本の防空はかつてなく厳しい環境下にある。戦闘機の潮流は、レーダーで探知されにくいステルス性や高運動性をもつ第5世代機の時代だ。「最強」といわれる米国のF22や欧米が共同開発中のF35に続き、ロシアや中国も開発を急いでいる。
そうした中で、国際情勢にあった性能や、米軍との相互運用性など能力面を考慮に入れるのは当然だろう。しかし、留意すべき点はそれだけではない。
この30年で戦闘機の価格は約3倍に跳ね上がっており、抑制的な防衛予算とどう折り合いをつけるのかという難題がある。
軍用技術の秘匿度も高まっており、ステルス機だと国内でのライセンス生産ばかりか維持・修理も難しく、日本の航空機産業への打撃が予想されている。
今回の選定は、ステルス性の高いF35、ステルス性では劣るが総合力では引けを取らない米国のFA18、欧州のユーロファイターの3機種の競争になる。
それぞれ一長一短がある。
例えば、空自が本命とみるF35は開発が遅れており、価格も格段に高くなる見込みだ。
また、同機が誇るステルス技術は本来、ひそかに敵陣深く侵入し、相手を攻撃する手段として開発された。空自の想定する防空戦でも強みを発揮するが、対抗技術の猛追もあり、それだけでは決め手とならない。
日本として後継機のステルス性に重きを置くことが、どのような得失につながるのか、冷静に見極める必要があろう。
昨年末に決まった新たな防衛計画の大綱は、自衛隊の機動性を高める「動的防衛力」という考え方を打ち出した。戦闘機による警戒・監視活動は、その中核を担う。
しかし、予算制約が深刻さを増す中、空自の今の規模の固守も、性能の格段の向上も、という欲張りが通るだろうか。戦闘機の保有数や部隊編成に切り込むくらいの発想の転換があっていいのではないか。