HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 40540 Content-Type: text/html ETag: "b9638-1c9d-46d90dc0" Expires: Wed, 04 May 2011 02:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 04 May 2011 02:21:37 GMT Connection: close 非常時への対応 本来なら憲法の見直しが要る : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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非常時への対応 本来なら憲法の見直しが要る(5月4日付・読売社説)

 ◆国会の機能不全は放置できない◆

 巨大な地震と津波、そして原子力発電所事故。かつてない国難に直面すると、国家の基本である憲法の在りように思いを致さざるをえない。

 施行から65年目を迎えた憲法の姿を、震災への対応という観点から考えてみたい。

 問題の一つは、現行憲法が、緊急事態への対処を規定する条文を欠いていることだ。

 国の緊急事態としては、今回のような大規模災害や、原発事故だけでなく、外国からの侵略、テロも想定される。

 ◆各国には対処条項が◆

 政府には、こうした重大な局面で迅速、適切に対処することが求められる。主要国の多くの憲法に緊急事態条項があり、対処の原則を定めているのはこのためだ。

 居住や移転の自由、財産権など基本的人権が、その場限りの超法規的な措置によって侵害されるのを防止する目的もある。

 政府は今回、災害対策基本法に基づいて菅首相を本部長とする緊急対策本部を設け、被災者の救助と救援に当たった。

 阪神大震災の教訓を踏まえ、制度の改善を重ねてきただけに、地震と津波に関する初期対応は、おおむね妥当であった。

 だが、災害対策基本法では、国が強制力を持った措置は取りにくく、今回のように広域で甚大な震災には、十分対応できないとの指摘が出ている。

 深刻なのは原発事故である。

 原子力災害対策特別措置法によって政府は、原子力緊急事態を宣言し、対応に当たっているが、初動の遅れは明らかだ。

 たとえば、原子炉冷却に必要な人材や機材を、既存の法律にとらわれずに緊急輸送する措置が取られていれば、ここまで事態は悪化しなかったのではないか。

 ◆次の大地震への備えを◆

 無論、緊急事態には、首相が強いリーダーシップを発揮し、各府省の統率をとることが第一だ。

 しかし、政府がより円滑に動けるようにするには、それを可能にする法制度を整備しておくことこそ、根本的な課題である。

 近い将来の憲法改正が容易ではないことを考えれば、「緊急事態基本法」を制定してはどうか。

 緊急事態時に、国が万全の措置を講じる責務を持ち、経済秩序の維持や公共の福祉確保のために、国民の権利を一時的に制約できるようにするものだ。

 自民、公明、民主の3党は、こうした「緊急事態基本法」を検討し、2004年には、成立を図ることで合意している。

 そうした仕組みがあれば、首都圏直下型地震や東海、東南海、南海地震など、想定される大震災の際、今回より迅速で適切な対応をとることができるだろう。

 現在も続く東日本大震災への対応は、法制度上、どんな問題を残すのか。政府と与野党は、徹底的に検証し、緊急事態基本法の制定へ本格的に動き出すべきだ。

 ◆「強すぎる参院」が問題◆

 もう一つの問題は、憲法が規定する衆参二院制の在り方である。

 震災前、国会は衆参のねじれで機能不全に陥っていた。一応「政治休戦」の状態にある現在ですら、震災復興関連の特別立法への対応が鈍く、立法府の役割を十分に果たしているとは言い難い。

 根底に、「強すぎる参院」という問題が横たわっている。

 野党側が、政府攻撃の手段としている参院の問責決議には何ら法的根拠はない。だが、ねじれ国会の下では、野党が「問責決議の対象となった首相や閣僚とは審議に応じない」との態度を取れば、国会運営は行き詰まってしまう。

 問責決議は、実質的に衆院での不信任決議と同じ効力を持ちかねない。それが今の国会だ。これでは衆院の優越を定めた憲法の理念に反することになろう。

 与野党が新たな国会運営のルールを確立する必要がある。究極的には、憲法改正で衆院の優越を一層明確にしなければならない。

 法案で参院が衆院と異なる議決をした場合、衆院による再可決の要件を現行の「3分の2以上」から「過半数」に緩和すればよい。首相の指名権を衆院に限定するなど役割分担を進めるべきだ。

 衆参両院には「1票の格差」を巡る訴訟で「違憲」「違憲状態」の判決が相次いでいる問題もある。選挙制度の見直しが急務だ。そのためにも、国会は憲法の次元から議論を起こし、両院の権能を大胆に見直さねばならない。

2011年5月4日01時02分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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