HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 04 May 2011 00:10:05 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ビンラディン 9・11時代に終止符を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

ビンラディン 9・11時代に終止符を

2011年5月4日

 ウサマ・ビンラディン容疑者死亡は、米国の対テロ政策最大の成果だ。報復テロも懸念されるなか、宗教対立が絡み世界を二分した「9・11時代」に終止符を打てるか、国際社会の試練が始まる。

 三千人近くが犠牲となったニューヨークのグラウンド・ゼロ。深夜繰り出した市民の歓声は「首謀者死亡」が米国にもたらした安堵(あんど)と解放感の大きさを物語る。

 一方、テレビ演説したオバマ大統領の口調は国民の心情を反映しつつ、報復の激化、テロ警戒継続への備えを訴える抑制を利かせたものだった。

 米中枢同時テロの主犯殺害が、即座にテロ収束につながるわけではあるまい。十年に及んだ「テロとの戦い」の終息までには越えるべきハードルが多い。

 最大の課題は、アルカイダが構築したネットワーク型の国際テロへの対応だ。アルカイダは、ビンラディン容疑者の説いた反米・反近代思想のもと、世界各地のテロ組織が独自に活動する分散型の組織だ。小さな地域細胞もあれば、かつてのアフガニスタンやアフリカの破綻同然の国家に巣くい、国家主権を盾に大規模テロを仕掛ける例まである。国際社会が有効な対抗手段を築いたとはいえない。

 国内で育まれるテロリストへの恐怖もある。一昨年、テキサス州米軍基地で起きた軍医による乱射事件が、過激派イスラム教導師と接触のあったアラブ系米国人による犯行だったように、狭隘(きょうあい)な思想は、移民二世などが抱きがちな精神的空隙(くうげき)に忍び込みやすい。情報が瞬時に世界に拡散するネット社会に宿る厄介な課題だ。

 テロの背景をなす反米感情もアラブ諸国を中心に依然根強い。湾岸戦争時、イスラム教聖地のあるサウジアラビアに米軍が駐留したことから一気に高まった対米批判は、民主主義や世俗主義など、近代的西欧価値観そのものへの憎悪に増幅された。

 今後を占う重要な試金石が中東民主化の動きだ。独裁体制の崩壊を平和的手法で勝ち取った一連の民衆革命にアルカイダの入り込む余地はなかった。その行方はなお不透明とはいえ、偏狭な思想はイスラム教徒自身によって排斥され始めている。

 不得手とされた安全保障問題で威信を高めるオバマ大統領がこの機を逃さず国際社会をリードし、かねて訴えてきた「イスラムとの対話」に具体的な成果をあげることができるか。真価が問われるのはこれからだ。

 

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