ロック歌手の浜田省吾さんが先週、かつての被災地の神戸で急きょ、東日本大震災の復興支援コンサートを開いた。チケット代などから必要経費を引いた収益を被災地に送るという▼会場の外では、スタッフがファンの持参する絵本を受け付けていた。被災地の子どもたちに絵本を届ける移動図書館のプロジェクトだ。段ボール何十箱分もの絵本が集まっていた▼支援にはさまざまな方法がある。この大型連休中、何千人ものボランティアが現地に入っている。「毛細血管」は活発に動いているが、肝心の「大動脈」は詰まってはいないか。後手に回る政府の対応を見ていると、そんな印象がぬぐえない▼迷走ぶりを象徴しているのが、福島第一原発事故への政府の対応を「場当たり的だ」と公然と批判した小佐古敏荘内閣官房参与(東大大学院教授)の辞任劇だろう▼学校での被ばく線量を決めた政府に、菅直人首相自らが起用した放射線安全学の専門家が「学問上の見地からも、私のヒューマニズムからも受け入れ難い」と涙ながらに抗議した。それを見れば、福島県民でなくとも、誰を信じればいいのか分からなくなる▼震災復旧に向けた第一次補正予算がやっと衆院で可決した。復興構想会議の委員は、連休中に被災地を視察する。現場を見ていない委員は少数だとは思うが、いまごろ視察とは悠長すぎはしないか。