HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 30 Apr 2011 23:10:32 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 「日本リセット」の道筋:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

週のはじめに考える 「日本リセット」の道筋

2011年5月1日

 例年なら心がわくわくするゴールデンウイークですが、今年は違います。大震災後の「再生日本」へ向けて私たちが英知を総動員すべきときです。

 十六年前、阪神大震災が起きたとき戦後五十年の節目と重なったこともあって日本の運命論議が行われたように、今回の東日本大震災は「第二の敗戦」だと受け止めて、これからの日本をどうリセットしていくべきかの議論が活発化しています。大地震、大津波に加え、原爆ではなく、原発という原子力の平和利用が裏目に出て多方面に被害を及ぼしている影響があるからでしょう。

◆認識が甘くないか

 東日本大震災復興構想会議の特別顧問に就任した哲学者の梅原猛氏(86)は「あの敗戦と比べてもはるかに深い亡国の危機に直面している」と本紙コラムに書いています。確かに敗戦直後と比較すると社会全体の「成熟化」「高齢化」に伴い日本人のエネルギー、元気度、がむしゃらさなどの点では、貧しくとも若さに任せて懸命に生きた昭和二十年代より深刻かもしれません。それだけに復興は「震災前の生活を取り戻す」という従来の延長線上的な発想ではなく、新たな生活基盤を科学的、合理的、効率的に模索するものでなければなりません。

 その点、気になることが一つあります。3・11後の原発に関する各種世論調査では「廃止・減らす」と「増設・現状維持」に二分されるか、「増設・現状維持」のほうが多い結果が出ているのです。福島原発との距離感があっての回答かもしれませんが、それにしても「認識が甘い」といわざるを得ません。「安全には絶対がない」ことを今回の放射能漏れ事故は警告したわけで、私たちは、それを前提に原発とどう付き合うのかを決めなければなりません。

◆常に「次善の策」用意

 地球環境工学が専門の小宮山宏三菱総研理事長(前東大学長)は原発を「今世紀前半までの過渡的エネルギー」と位置付け、(1)太陽光など自然エネルギーの供給増(2)電力需給バランスを電力網内で最適化するスマートグリッド(次世代送電網)の採用(3)人々の多様な働き方による節電−などを提案しています。現在、一世帯あたりの電力消費量は月平均三百キロワット近くですが、原発を全廃すればエネルギー上の生活水準を一九七〇年代初めまで戻さなければなりません。それは困るとの気持ちが前記の調査結果にはありありです。

 「快適な生活も安全も」という欲張り路線でいくのか、「やはり安全優先で」に切り替えるのか。ここが「日本リセット」の大きな分岐点です。今回の津波でも、これなら大丈夫と高めた防波堤が破壊されました。中部電力は浜岡原発に関して海側に新設する防波壁の高さを当初は十二メートル以上としていましたが、その後十五メートル以上と改めました。正直いって何メートルなら安全という保証は無いに等しいのです。「原発」か「安全」かに関しては、政府、電力会社、専門家がデータを出し合ったうえで、各党が次の国政選挙で国民の選択を求めるのも一案でしょう。

 もう一つの日本リセット論としては、エネルギー政策にしろ、国土計画にしろ「次善の策」を常に用意するよう提案します。

 今回の原発事故で米国製ロボットが活躍しましたが、「日本はロボット先進国のはずなのに」と首をかしげた人も多かったのではないでしょうか。実は九九年の東海村臨界事故のあと原発災害向けの作業ロボットも開発されたのですが、資金問題もあって中途半端に終わったのです。

 太陽熱発電も同様です。八一年にサンシャイン計画の実験施設があった香川県仁尾町(現三豊市)で世界最初の太陽熱による一千キロワットの発電に成功しました。しかし、これも期待した成果を出せないままになりました。

 さらにいえば、結果論ですが東電福島第一原発の非常用電源が、もっと離れた内陸部に用意されていたら事故後の対応が違ったものになっていたでしょう。こうしたことの背景には電力会社が地域独占で、企業間競争力が働かないために安全対策で危機感が薄かったという側面を否定できません。

 政治のリセットも不可欠です。明暦大火の際の保科正之(大名)、関東大震災の時の後藤新平(内相)など惨禍後の復興に指導力を発揮した為政者が、なぜ現代には登場しないのでしょうか。

◆最大多数の最大幸福

 ある政治学者の言葉です。「菅首相のうたい文句は『最小不幸社会の建設』でしょ。否定語を二つ並べるセンスを疑いますね」

 最大多数の最大幸福。そこへ日本リセットの出発点を置かないと「災後日本」の新生は難しいのではないでしょうか。

 

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