HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 18103 Content-Type: text/html ETag: "638a7e-46b7-83e334c0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Wed, 27 Apr 2011 23:21:42 GMT Date: Wed, 27 Apr 2011 23:21:37 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年4月28日(木)付

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 〈行く春や鳥啼(な)き魚の目は泪(なみだ)〉の名句を手始めに詠んで、松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅に出たのは1689(元禄2)年の3月27日だった。旧暦だから、今年の暦にあてはめれば明日が旅立ちの日にあたる▼北へ向かうのに、「時あたかも良し」と芭蕉翁は思ったのだろう。風光る春から、風薫る初夏へと移る季節は、自然の中に盛り上がるような力がみなぎる。その力を俳聖は借りようとしたのではないか。後世、この時期に黄金週間を置いたのは絶妙の配剤といえる▼その黄金の輝きが、今年はくすんでいる。震災の衝撃はあまりに大きく、大勢の胸から「旅ごころ」を吹き消した。原発禍を案じて外国人は日本を敬遠したままだ。津々浦々、多くの観光地が、かつてない痛手を避けられそうにない▼9・11後の米国もよく似ていた。旅行者は減り、繭ごもりを意味する「コクーニング」という言葉が流布した。「日常に戻ろう」と為政者は叫んだが、笛吹けど踊らず。トンネルを抜けるのに長くかかった記憶がある▼半面、繭ごもりで家族や身近な共同体の絆は深まったとされた。ならば一石二鳥、GWは家族で大いに旅すべし、と我が単純な頭は考えるが、いかがだろう▼古典に戻れば「徒然草」の兼好法師も旅を勧める。〈いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ目覚むる心地すれ〉。リフレッシュには旅が一番、だと。早く旅ごころを取り戻したい。物見遊山と言うなかれ。がんばろう日本の、花も実もある実践になる。

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