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2011年4月27日(水)付

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余震と直下型―列島全域、安心できぬ

日本列島のどこで、いつ、大きな地震が起きても、全く不思議はない。地震学者たちが警告している。これまでの予測にとらわれず、改めて全国で地震対策を総点検したい。いま、頻繁に[記事全文]

震災と法律家―専門を被災地に生かせ

大勢の弁護士がいま、被災者からの無料法律相談にあたっている。避難所に足を運び、家族を、財産を、生活のすべを失った人々の訴えに、耳を傾ける取り組みが広がる。今後、仮設住宅を回ることも検討してい[記事全文]

余震と直下型―列島全域、安心できぬ

 日本列島のどこで、いつ、大きな地震が起きても、全く不思議はない。地震学者たちが警告している。これまでの予測にとらわれず、改めて全国で地震対策を総点検したい。

 いま、頻繁に起きているのは、東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9.0の巨大地震に伴う地震だ。これまでの余震は、M7級が5回、M6級が75回もあった。全く収まる気配がない。長期化も予想されている。

 南北500キロ、東西200キロに及ぶ震源域の北、南、東で、M8級が起きるおそれもある。海で起きれば、再び大津波が襲ってくる可能性がある。

 だが、心配される地震はこれにとどまらない。巨大地震は、東北地方を最大で5メートル、東方向に動かした。それによって、列島地下の力の構造が大きく変わってしまったらしい。

 その結果、日本列島の地震活動が高まっている。

 誘発されたと見られる地震も新潟や長野、静岡などで相次いでいる。東日本を中心に東京湾から九州まで、全国16地域で地震活動が活発化している。

 巨大地震はもちろんのこと、首都圏直下を含む、内陸地震への警戒も強める必要がある。内陸の地震はM6〜7級でも、建物の倒壊によって大きな被害が出る。

 建物を地震の揺れに強くすることが何より大切だ。公立の小中学校の耐震化率は約73%、震度6強で倒壊のおそれがあるものが7500棟あった。補強を急ぐ必要がある。住宅など古い建物の対策も必要だ。

 家庭では、家具を固定し、寝ているところに家具が倒れてこないようにしておきたい。

 地震は、起きる時間帯が日中か夜か、あるいは平日か休日かによって、その被害の様相は大きく異なる。3月の大震災は平日午後だったので、まとまって避難もできた。これが深夜だったらどうだったか。

 私たちは今、頻発する地震をさまざまな時間帯、さまざまな場所で迎えている。そのつど、もしこれが大地震だったら、と考えてみよう。

 路上かもしれないし、地下街にいるかもしれない。あるいは家庭で調理中かもしれない。周囲には、壊れやすいものなど、どんな危険があるだろうか。

 そしてその時、どうやって身を守るか。外にいるなら、そこからどこへ向かうか。

 想像力を働かせ、足りないものを見つけ出そう。そうやって一歩ずつ、身のまわりで備えを固めてゆきたい。

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震災と法律家―専門を被災地に生かせ

 大勢の弁護士がいま、被災者からの無料法律相談にあたっている。避難所に足を運び、家族を、財産を、生活のすべを失った人々の訴えに、耳を傾ける取り組みが広がる。今後、仮設住宅を回ることも検討している。

 命をつないだ後の最大の気がかりは、将来の生活だ。

 自宅や船を買うために、あるいは事業の運転資金として借りたローンはどうなるのか。勤め先に仕事がない。このまま解雇されてしまうのか。借りていた家がなくなった。大家が再建したらそこに戻れるのか――。

 心配やトラブルの多くは法律問題につながる。どんな義務があり、いかなる権利を主張できるのか。論点を整理し、解決の道筋を探り、場合によっては政策や立法措置を提言する。法律家の大切な役割だ。

 むろん、個々の弁護士にできることには限りがある。日本弁護士連合会や日本司法支援センター(法テラス)が早い段階から、組織として震災に対応してきたことは評価したい。

 日弁連は3月下旬以降、具体的な相談例や阪神大震災の経験を踏まえて、弁護士向けの研修会を何度か開いている。会場が満杯になる1千人が集まったこともあるという。インターネット経由で受講できるeラーニングも実施している。

 復興の歩みは長丁場になる。こうした研修などを通じて、相談に応じ、代理人として交渉や裁判を引き受ける層を厚くし、現地の弁護士と協力して被災者をサポートする。そんな体制を築くことが求められる。

 労働問題や年金業務に詳しい社会保険労務士、法律事務の専門家の司法書士、税理士など、同様にこの災禍に立ち向かっている専門職との連携も必要だ。

 法律に関する相談すべてに対応できる拠点を、各被災地に設けられないか。裁判費用を用立てる法律扶助予算の拡充など、政府の支えも欠かせない。

 ひときわ困難な作業が予想されるのは、原発事故被害への対応だ。文部科学省の審査会が賠償範囲の指針を示す予定だが、現場の事情は様々で一件一件解決していくしかない。最後は司法の判断を求めるにせよ、裁判外紛争解決手続き(ADR)の積極活用も考えるべきだろう。

 新たな解決機関を設けるか、既成のものを活用するか。いずれにせよ、信頼でき利用しやすい仕組みを整えることが、被災者の安心と支援につながる。

 法律家は「国民の社会生活上の医師」と位置づけられる。その名にふさわしい働きが、いままさに求められている。

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