HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 39735 Content-Type: text/html ETag: "100e15-167b-d6993440" Expires: Mon, 25 Apr 2011 22:22:42 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 25 Apr 2011 22:22:42 GMT Connection: close JR西事故6年 遺族との検証を安全の道標に : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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JR西事故6年 遺族との検証を安全の道標に(4月26日付・読売社説)

 乗客106人が亡くなったJR福知山線の脱線事故から、25日でまる6年がたった。

 遺族とJR西日本は、事故の背景要因を共同で検証した報告書を公表した。被害者と加害者が一つのテーブルを囲んで議論する、鉄道事故史上、初めての試みだった。

 JR西は、この共同作業を、事故の再発防止と信頼回復への取り組みの弾みとすべきである。

 ダイヤ編成や、自動列車停止装置(ATS)の設置は適切だったか、などを検証した。会合は約1年半の間に16回を数えた。

 ダイヤについて、JR西は「電車の余裕時間を削ったため正常ダイヤに戻す余力が少なくなってしまった」としている。過密ダイヤが事故の遠因となる可能性を認めたことは大きな意味があろう。

 一方、ATSについては「カーブの危険性を把握する技術が不足していた」と反省は見せたものの、「設置しなければならなかった」とまでは認めていない。

 事故原因に関係する新事実もない。前社長が業務上過失致死傷罪に問われ、裁判中だ。JR西が、公判に影響するような報告書にはしたくなかったと推測される。

 共同検証のきっかけは、国土交通省の事故調査委員会(現・運輸安全委員会)を巡る情報漏えい問題だった。JR西幹部らが調査委に働きかけ、事故調査報告書の内容を公表前に聞き出していた。

 遺族の不信感を和らげ、疑問に答える場とする狙いで設けられたのが共同検証だった。

 遺族側は、検証報告書の出来栄えを「60点」としている。満足はできないが、安全対策に生かすべき重要な点や方向性は指摘できたとの受け止めなのだろう。

 鉄道事故調査のあり方を巡り、遺族は有識者と共同で「安全委の事故調査と、警察・検察の捜査を切り離すべきだ」と提言した。

 安全委の調査結果が刑事裁判の証拠に使われる現状は、加害企業が責任追及を恐れ、真実を語らなくなるというのだ。安全委が検討を始めた。教訓を生かしたい。

 検察審査会の2度の議決で強制起訴された3元社長の公判前整理手続きも近く始まる。遺族は真実を語ってほしいと願っている。

 JR西では、最近も運転士が運転中に携帯ゲームに興じ、車掌が運転台の緊急時無線のヒューズを抜き取って逮捕されるなど不祥事が相次いでいる。

 JR西は、遺族が粘り強く完成させた報告書を道標に、安全の再構築へ全力を挙げるしかない。

2011年4月26日01時38分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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