海外での、日本メーカーの製品への信頼度は高い。だが、より高いのはメード・イン・ジャパンへの信頼かもしれぬ▼いくら日本メーカーの製品でも日本製でないと評価が下がり、極端な場合、「偽物」とみなす人も。だが、日本製の看板は、ずっと昔から高い評価を得ていたわけではない▼戦後しばらくのころまではむしろ、メード・イン・ジャパンは「安かろう悪かろう」の代名詞。引き金を引いても弾丸が出ず、しげしげと銃を見た男がこう言う。「なんだやっぱり日本製か」…。米国では当時、そんなジョークのネタにされていたそうだ(NHK『プロジェクトX』)▼残念だが何となくそれを想起させる話。白雪姫が魔女の差し出す毒リンゴを虫眼鏡で見ながら「ちょっと待って。日本から来たの?」。最近、米有力紙傘下の国際英字紙に載った漫画である▼福島の原発事故に起因する海外の「日本製」への風評被害は食品から工業製品にまで及ぶ。以前にも小欄で触れたが、なお収まる気配がない。漫画への抗議だけでなく、政府の一層の情報発信が必要だ▼メード・イン・ジャパンを「信頼」の代名詞に変えるまでにどれほど多くの日本人の苦労があったか。戦後日本経済の歩みとも重なる逆転への奮闘を思う。そんな、宝のような看板の“放射能汚染”。無念だが、これも私たちが支払う原発のコストである。