震災下の統一地方選は、防災対策や原発行政が争点に急浮上し、自治体の大切さを考える機会となった。地方自治は最も身近な政治である。議会改革をもっと進め、よりよい自治を育てたい。
統一地方選後半戦は市区町村の首長、議員を選ぶ機会で、全国で計九百十件あった。東日本大震災や福島第一原発事故を受け、地域住民の安全・安心が争点となり、有権者に有事の自治体の在り方も問いかけた。
とりわけ原発のある自治体で議論は高まった。福井県敦賀市長選では四候補とも「原発と共存」の立場で、防災計画やまちづくりの見直しなど安全・安心を論じ合った。この意義は大きい。新潟県柏崎市議選、石川県志賀町議選などでは、反原発・脱原発派が存在感を示した。
投票率は前後半とも低かった。有権者は安全・安心に関心を持ち、各候補者の訴えも防災対策を重視した。だが、選択基準になるような具体策にまで踏み込んだのかどうか疑問は残る。
注目の地域政党は、既成政党に不満を持つ有権者の受け皿となり、局地的には健闘、全国的にも善戦した。惜しむらくは、「議会を変える」との訴えが震災でかすんでしまい、改革の議論が十分に深まらなかった。
そんな中、橋下徹大阪府知事が率いる「大阪維新の会」は躍進した。府議選、大阪、堺市議選、吹田市長選は全国から注目された。新しい地方自治を見つめる目であり、現状打破の期待感でもある。
名古屋市議選などで旋風を巻き起こした河村たかし市長の「減税日本」は、愛知県内だけでなく東京都の区長・議員選など全国で積極的に擁立したが、苦戦を強いられた。そもそも首長新党ならば地元を固めるのが先のはず。全国進出の拡大戦略は目的があいまいになるし、急ぎすぎではないか。
近年、地域政党の進出もあって、特権階級ともいわれた地方議員に会社員、女性、学生−など多様な人材が集まり始めた。住民に身近な議会の存在価値は大きい。首長の言いなりでない、政策提案する議会に生まれ変わり、民主主義が活発に機能する二元代表制にしてほしい。
国民は震災を教訓に、自治の重要性をかみしめている。住民が支え合い、その声がよく届くようになるのか−。そう考えた有権者は多かったに違いない。選ばれた首長、議員、そして住民みんなで自治を鍛え、強くしていきたい。
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