オーストラリアのギラード首相が来日し、資源とエネルギーの安定供給を約束した。日本は懸念される電力不足を改善し経済を立て直すために、提供される資源を有効に活用したい。
ギラード首相は日豪首脳会談で火力発電に使う液化天然ガス(LNG)と石炭、さらに鉄鉱石やレアアース(希土類)についても安定供給を続けると明言した。
福島第一原発の事故が引き金となって不安が拡大し、日本の原発は定期点検中だったものも含め、五十四基のうち半数以上が運転を停止している。当面は火力発電によって電力不足を補うしかなく、豪州からの申し出は心強い。
東日本大震災では豪州国防軍がC17輸送機三機を日本に派遣。七十五人の救助隊が津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町に入り捜索、救助活動をした。
両国はここ数年、スマトラ沖地震(二〇〇四年)やパキスタン洪水(一〇年)など、アジアで起きた災害の救援活動で協力してきたが、今回、くしくも日本が震災当事者になってしまった。
日豪両国はともに主要な貿易相手国であり、最近は米国も含めた三カ国での安全保障協力が進んでいる。豪州が支援に積極的なのは、日本の経済回復の遅れがアジアの不安定要因になりかねないという判断もあったからだろう。
首脳会談で先送りされた懸案もあった。経済連携協定(EPA)について菅直人首相は交渉の早期再開を約束したが、踏み込んだ議論にはならなかった。ギラード首相は日本記者クラブでの会見で、震災対応に追われる日本の立場に理解を示しながらも「経済統合、貿易自由化を積極的に進めるべきだ」と述べて、EPAの必要性を強調した。
日豪は〇九年、核不拡散と核軍縮を呼び掛ける行動計画を発表した。また自衛隊と豪州軍が国連平和維持活動(PKO)などで、食料や燃料、役務を融通しあう協定も結んだ。
日本はいま震災からの復旧、復興に手いっぱいだが、これまで築いてきた豪州との協力を今後もさらに深めたい。外交で萎縮せず、国際社会に貢献する責務が各国から求められている。
ギラード首相は南三陸町を二十三日に訪れる。各国大使が被災地を訪ねているが、外国首脳としては初めてだ。住民、そして日本全体が復興に立ち上がる姿を世界に伝えてほしい。
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