いびきがうるさい、寝ている時に息が止まっている、と家人に言われ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を受けた。重症なら、寝ている時に鼻に空気を送り込む療法が必要になり、軽症でも気道を広げるマウスピースを付けることになる▼飲酒して寝た時のいびきが、とりわけひどいらしい。当人はぐっすりと寝ているのだが、さすがに心配した家人から検査を強く勧められた。結果は近く出る▼迷惑を掛けているのが家族だけならまだいい。津波で自宅を流され、集団生活が続く東北地方の避難所でも、いびきをかく人は肩身の狭い思いをして安眠できないと聞く▼福島第一、第二原発で、東京電力社員ら約九十人から話を聞いた愛媛大学の谷川武教授(公衆衛生学)によると、第一原発の作業員二百人が寝ている体育館では、重症のSAS患者の大きないびきで、他の作業員がよく眠れない状況だったという▼教授の治療によって睡眠環境は改善されたようだが、厳しい作業に追われる社員らに休む場所もなく、心理的に追い込まれている状況は変わっていない。不眠を訴える人も多く、うつ病や過労死のリスクが高まると谷川教授は心配している▼原発で働く人たちは、相変わらず劣悪な環境に置かれている。人のいびきを気にせずに、安眠できる環境もつくれないのなら、東電が描く工程表は絵に描いた餅になる。