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東日本大震災では、なお10万人を超える人たちが避難所で生活している。衛生面や医療の態勢はまだまだ不十分で、生活はプライバシーに乏しい。心身の不調を訴える人が目立つ。行方[記事全文]
カダフィ政権に反乱が起きたリビアが混迷している。国際社会が軍事介入に踏み切ったが、収束への道筋はみえないままだ。このまま戦闘をエスカレートさせてはいけない。英米仏を中心[記事全文]
東日本大震災では、なお10万人を超える人たちが避難所で生活している。衛生面や医療の態勢はまだまだ不十分で、生活はプライバシーに乏しい。心身の不調を訴える人が目立つ。
行方不明の家族を捜し続ける人。農業や漁業をしてきて他の地域に移ることが難しい人。事情は様々だが、住み慣れた土地に、一刻も早く、ゆっくり過ごせる住まいを用意したい。その柱となるのが仮設住宅だろう。
岩手、宮城、福島の3県を中心に、すでに7万戸を超える要望が寄せられている。国土交通省は「できるだけ夏までに完成させたい」としているが、思うように進んでいない。
建設資材が高騰したり、上下水道や電気、ガスの整備にかかわる専門要員が不足したりと、課題は多い。海外からの安い資材を使い、国や他の自治体から応援部隊を派遣するなど、対策を急いでほしい。
難題は建設用地だ。予定戸数の半分も確保できていない。
被災地の多くは山が海に迫り、貴重な平野部は津波に襲われた。国や自治体の公有地だけではとても足りない。
農林水産省は、農地転用に伴う手続きをゆるめ、休耕田や耕作放棄地に関する情報を自治体に提供するよう呼びかけた。
遠方に住む土地の所有者に連絡を取っている市町村も少なくない。一歩進め、所有者がわからなかったり、多くの地主がかかわったりする空き地も使えないか。個人の財産権がからむが、国や自治体が期間限定で借り受け、事後に使用料を払えるよう、法律を整えるのは可能だろう。自治体から要望があれば、取り組むべきだ。
宮城県では、津波の被害が大きかった南三陸町で、被災した小中学校に仮設住宅を建てる方向で検討中だ。内陸部には用地があるが、地元にとどまりたいとの住民の希望が強いためという。万一の場合の避難方法をしっかり検討してほしい。
岩手県では、被災した大船渡、陸前高田の両市に近い住田町が、地元材を使って「木のぬくもりのある仮設住宅」を準備中だ。内陸にある住田町は震災の被害を免れ、力を入れる林業を生かして支援に乗り出す。こうした住宅なら、被災者も入居しやすいのではないか。価格も、大手住宅メーカーによるプレハブ住宅の半額強という。
住まいの確保は時間との闘いになりつつある。避難者に納得してもらい、市町村の垣根を越えて移ってもらうことも避けられないだろう。その前に、官民あげて知恵を出したい。
カダフィ政権に反乱が起きたリビアが混迷している。国際社会が軍事介入に踏み切ったが、収束への道筋はみえないままだ。このまま戦闘をエスカレートさせてはいけない。
英米仏を中心とする多国籍軍がリビア政府軍を攻撃して1カ月になる。反体制派への報復・虐殺を阻止するための人道的介入のはずだったが、その限界が見えてきた。いったん勢いづいた反体制派に対し、政府軍が巻き返している。
西部にある第3の都市ミスラタは、2月末から政府軍に包囲されている。無差別砲撃や狙撃で連日、多くの犠牲者が出ており、水や食糧も不足している。狙撃兵が市街にひそみ、外出もままならないという。「このままでは皆殺しにされる」という声は痛ましい。
多国籍軍を指揮する北大西洋条約機構(NATO)は、政府軍の戦力の約3割を破壊したと発表した。だが、反体制派の部隊への誤爆も相次ぎ、首都トリポリへの空爆で市民が巻き添えになったという情報もある。
戦闘が長期化するほど、人道危機が深まる。政府軍が攻勢をかければ、阻止しようと多国籍軍も爆撃をエスカレートさせる。この悪循環を断ち切らなくてはならない。
行き詰まりをうけ、英国は軍事顧問団を反体制派の拠点ベンガジに派遣する方針だ。連絡調整や後方支援にあたり、直接の軍事作戦や訓練にはかかわらない、としている。
軍事介入を認めた国連安全保障理事会の決議は「外国軍によるリビア占領はいかなる形でも除外する」として、地上軍の派遣を禁じている。顧問団は直接には戦闘に加わらぬというが、当初の決議の枠を超えて内戦にてこ入れを図るなら、安全保障理事会の新たな決議が必要だ。
なし崩しに軍事行動が変質すれば、正統性を欠いたイラク戦争の二の舞いになりかねない。
軍事的な圧力だけではなく、経済制裁や外交努力も強化しなければならない。欧州連合(EU)はリビアの石油・ガスの禁輸を決め、人道支援を準備している。多国籍軍に加わるカタールは反体制派の財政を支える石油の輸出を代行することになった。アラブ連盟を含む関係国が仲介に動く必要がある。
反体制派はいっそうの軍事援助を求めている。だが、外国の軍事力で政権を打倒しても、安定した国造りはできない。これはイラクやアフガニスタンで学んだ苦い教訓である。リビアで同じことを繰り返すわけにはいかない。