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天声人語

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2011年4月20日(水)付

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 福島県郡山市で隔月に刊行されている児童詩誌『青い窓』を毎号送っていただく。1958年の創刊だから半世紀の歴史がある。最終ページに小さく刷られた言葉がいい。〈素晴らしい人間に出会うのではなく、人間の素晴らしさに出会う〉▼人は誰も善悪や美醜をないまぜにして生きている。後光がさすような素晴らしい人は、立派だが、どこか遠い感じがする。むしろ誰の中にもある、キラリと光る素晴らしさこそ宝石ではないか。震災から40日、私たちは様々な宝石を心に留めてきた▼「疾風に勁草(けいそう)を知る」の故事を思い出す。激しい風が吹いて初めて、強い草が分かるという意味だ。何も大げさな話ではない。被災に負けず、地元でボランティアの「青年協力隊」を作った高校生5人もいた。くじけぬ勁草ぶりも、人間の素晴らしさと言えるだろう▼半面、疾風は弱い草もあぶり出す。人ではないが、安全神話の原発はもろくも折れた。かつて小欄で引いた『青い窓』の詩を記憶する方から、福島の子らを案じる便りがいくつか届いている▼地震の前日に発行された最新号に小2の詩が載っている。その一節に〈さくらの花がさくころは/うれしさとさみしさが/りょうほう/いっぺんにやってくる〉。幼心にも出会いと別れの季節という思いはある▼天災と人災のために、この春、多くの児童生徒が故郷を離れて行った。学ぶ先々で「人の素晴らしさ」に出会えればいい。出会いを糧に跳ねるパワーが、若い総身に満ちている。

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