東日本大震災から一カ月を超えても、避難所生活を続ける被災者は、なお約十四万人に上る。精神的にも肉体的にも、限界を感じている人は多い。仮設住宅建設のピッチをもっと上げたい。
「プライバシーがほしい」「ゆっくりと落ち着く場所がほしい」…。体育館などの避難所で暮らす人々から切実な声が渦巻いている。住宅対策のために、政府は仮設住宅のほか、公営住宅や民間賃貸住宅の活用を打ち出している。
とくに仮設住宅は今のところ、宮城県で約三万戸、岩手県で約一万八千戸、福島県で約一万四千戸など、計約六万二千戸分の要望がある。だが、着工済みは約八千七百戸にすぎず、着工予定を含めても約一万戸だ。十数%しか進んでいないのは、寂しい数字だ。
岩手県の陸前高田市では、九日から初の仮設住宅への入居が始まったが、三十六戸だけだった。大震災からほぼ一カ月を経ており、明らかに対応が遅れている。
高台にある公有地など候補地が限られており、用地確保に困難をきたしている面はある。だが、地域の企業がグラウンドを提供するなどのケースもある。民有地を借り上げる方法もあろう。自治体などの努力に期待する。
建築資材は大丈夫だろうか。床などに用いられる合板は、岩手県と宮城県のシェアが三割あり、工場が被災した。さまざまな資材調達が需要に追いつかず、品薄なうえ、値上がりが気掛かりだ。業者の買い占めがあってはならないのは当然だ。全国の建材関係メーカーは増産を急いでもらいたい。
一般的に風呂などが付いて、二九・七平方メートルの広さ。ここで二年間、入居できる。当初の二カ月間で約三万戸、その後の三カ月で約三万戸を建設する方針という。入居まで五カ月間も待つのはつらい。何とかこのペースを上げられないものか。地域のコミュニティーを壊さないために、近隣同士で入居させる配慮も必要だ。
阪神大震災では約四万八千戸の仮設住宅が造られた。東日本大震災の被害はさらに甚大だ。政府は七万戸分の建設費を補正で計上する方針だが、一時は約五十万人が避難していた。戸数が十分かという疑問もある。
福島第一原発の事故で避難し、各地を転々としている人々の不安も深刻だ。帰郷できる見通しが全く立たないからだ。原発災害に遭った人を“漂流”状態に置いていいはずがない。
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