太平洋戦争の末期、米側でマリアナ沖海戦を戦ったのは、スプルアンス率いる第五艦隊。レイテ沖海戦は、ハルゼーが指揮官を務める第三艦隊だ▼こういうと、あたかも二つの艦隊のように思えるが、作家の半藤一利さんによれば、艦隊は一つだけ。使う艦船は同じで、休暇の時期が来ると、司令部と参謀がそっくり入れ替わる交代制をとっていたのだという▼これに対し、日本軍には休暇制度がなかった。半藤さんは言う。<三年半以上の戦争を休暇なしでやるというのは、狂気の沙汰としか考えられません>(江坂彰氏との共著『撤退戦の研究』)▼当然、休暇制度の有無だけで、あの戦争の帰趨(きすう)が決まったわけではない。けれど、長期戦を戦う上で「休む時間」が重要なポイントであることは確かだろう▼福島第一原発で、ぎりぎりの危険な仕事を続けている人たちの疲労が気になる。先日も「作業員の体力、気力は限界に近い」と語る原発作業員の記事を読んだ。被災者救援や、救援に関連するさまざまな分野で休みなく働いている人たちにも同じことはいえる。そして、被災者自身にも▼それどころではない状況も無論、続いている。でも、どうかできる部分では、システムとして、あるいは個人レベルで「休む時間」の確保を意識してほしい。戦争ではないが、この国は、間違いなく長期戦の最中(さなか)にあるのだから。